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Mail環境の転換

 悲しいお知らせがあります。OS 9からOS Xへの移行に際しメールソフトを捨てました。PostinoをそしてPostPetを捨てました。両者ともインターネットでのメールを始めた当初からの長いつきあいで、PostPetはベータ版から、Postinoはその開発当初から使い始め、有料の高機能版が出ればそれに移って、もう六七年も使っていたでしょうか。メールのすべてはPostinoによって管理されて、漢字Talk 7.3の頃から――、けれどOS Xでは使いません。

なぜメール環境を捨てたのか

 メール環境を捨てたのは、Postinoには未来がないからでした。Postinoはクラシック環境向けに開発され、しかしバージョンアップペースが衰えたと思ったら、OS Xに対応する2.0をフリーウェアとして出したのを最後として、開発を終了しました。バグフィックスを終えて正式版としてリリースされたのが2002年12月だったから、ほぼ一年前のことです。

 PostinoはOS X 10.3でも動作します。一部インターフェイスに表示上の問題があるそうですが、それでも特に問題なく動きます。ですがその構成はOS 9、クラシックOS向けに開発されていた頃そのままであり、メールのデータはアプリケーションと同階層にあるフォルダ下に収められるなど、マルチユーザを前提として設計されているOS Xにそぐうものではありません。

 僕はOS Xに移るとき、過去のものではなく、今まさに生起するものにこそ目を向けたいと思いました。故に過去の位置にあるPostinoは選ぶことができなかったのです。

 そしてもう一点。Postinoはiso-8859-1によるエンコーディングを、受信して解釈はしますが、送信することはできません。そのためOS 9上では別にEudoraを用意して、特にフランス語でのメール送信に対応していました。はっきりいいまして妥協です。妥協するだけの便利や快適がPostinoにはあったのですが、その妥協をOS Xでまですべきかという疑問がありました。

 Postinoの美点は、そのシンプルさでした。シンプルにして充分なメール管理。HTMLメールやスレッド表示などはサポートしませんが、それらは僕には必要ないものです。なので、本当な今でもPostinoで充分なのです。Latin 1エンコードをサポートしない以外は。

 PostPetに関しては、理由というべきほどのものはありません。単にペットメールのやり取りをもうしなくなってずいぶんたつという、それだけです。結局ベータ版でおかわりさんを見送っただけで、正式版になってからはただひとつのペットも見送ることなく終わりました。

 OS Xに移ることで、メールに関してはひとつの節目を迎えたのだなと思いました。今使っているのは、アップルの用意したMail.appです。

Mail.appについて

 Mail.appはOS Xに付属する、標準のメーラーです。マルチアカウントに対応し、受信メールを自動で振り分ける機能もついているので、とりあえずは充分。もちろんマルチリンガルOS付属のものですから、多国語に対応します。なのでこれを設定して最初にしたのは、フランスにメールを送ることでした。ずっと以前から送ろう送ろうと思っていたのですが、Eudoraを立ち上げてという面倒のために見送って、iBook G4到着まで待ったのです。

はじめてのHTMLメール Mail.appはPostinoとはずいぶん違いますが、ビューはいくぶん似ていて、シンプルであるという点にかけてはPostinoを上回っているかも知れません。けれどただシンプルなわけではなく、HTMLメールを表示し、メールのスレッド化もできるという、必要充分にして、僕には過ぎたる機能まであります。はじめて受けたHTMLメールがアップル銀座店の宣伝だったというのも面白いです。HTMLメールというのは、さすがにはやるだけあって、たいした表現力であると思いましたよ。ただ、そのせいでセキュリティ面での低下があるのだとしたらいやだなあ。その点については、ほんとにお願いしますよ、アップルさん。

 Mail.appに変えたことで大きく変わった、というところは実はあまりなかったりします。僕は意味が通れば見栄えはさして重要視しないので、メールをきちんと受けて出してくれれば文句はありません。一説によれば不安定だとか重いとかいわれるMail.appですが、いまのところそういう気配はないので、メールに関してはヘビーユーザでない僕です、以降もたいした問題は発生しないでしょう、多分。

 あ、そうそう、見栄えに関してひとつ気に入ってるところがありました。アドレスブックに登録する際に相手の画像を設定しておけば、到着したメールの右上隅に、その画像を表示してくれるんですよ。なかなか相手の画像を入手してまでするものではありませんが、メールに写真がついてるというのはちょっと異色に感じられて、少しばかりおしゃれです。ただ、アドレスを登録しておくと、メールアドレスが相手の名前だけになってしまって、そこはちょっといやだなあ。一目で宛先アドレスを判別できません。

問題はメールの移行だったりする

 さて、メール環境の移行は済んだというものの、実はデータの移行をしていないので、それをどうするかという問題があるんですよ。Postinoのメールデータは独自の形式でそのままではどのメーラーにも移行ができません。Eudora形式に変換するKzMailConverterというツールもあるのですが、変換に関しては注意が必要です。ひとつのメールが分割されたり、複数のメールが合わさったりという問題が報告されていいます。

 KzMailConverterによる変換不良の問題は、Postinoがメールヘッダ情報の始まりの行を、直前のメールの末尾にそのままつなげている場合に起こるようです。メール末尾のテキストから、改行なしでいきなり次のメールのヘッダが始まります。そのため変換がうまくいかず、おかしな状況に陥るようで、これはメールヘッダに特有の語を検索し直前に改行を入れてやれば回避できるのかも知れません。

 ですが、一言でメールといっても馬鹿にできなくて、数十万行にわたるデータになっているものもあるのですから、これを扱うのは大仕事です。AppleScriptでやっつけようと思って書いてみたら、そんな巨大なデータは取りこめず、エラーが発生しました(一行ずつ取り込むべきなんでしょうね、きっと)。なので今も過去のデータはそのままに、ただ過去のものを読むためだけにPostino 2.0を書類ディレクトリ下において、妥協的運用をしています。

 いずれ変換するなりしてPostinoを使わずに済むようにしようとは思っていますが、それまでは多分今のままでしょう。あるいは過去にはこだわるなという思し召しかも知れませんが、メールには重要なことも沢山含まれてますから、簡単には捨てられなくてちょっと困りますなあ。移行してMail.appが重くなってもいやだし、どうしたものか迷います。

 でも、いずれ、いずれどうかしますよ。その気がないわけじゃないんです。ただ面倒に気持ちが打ち勝つかどうか……、それが問題です。


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公開日:2003.11.20
最終更新日:2003.11.22
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