ガンパレード・マーチ

○単体で独り立ちしていれば二重丸つけても惜しくないのに

【タイトル】 ガンパレード・マーチ
【発売元】  SCEI
【ジャンル】 ADV
【価格】   2000.9.28発売 \5,800
【ハード】  プレイステーション


 与えられた役割を演じて楽しむことができるという意味で、文字通りのロールプレイングゲームである。基本は学徒動員された戦車兵としての学園生活を満喫する。だが、パイロットをおりて整備士になってもいいし指令になることもできる。さらには、やるべき仕事をほっぽって異性(同性とも)といちゃいちゃするのも可能。自由度の高さは他に類を見ないほどだ。ゲームとしての枠組みがしっかりとしているので、ゲーム性に破綻がないのは素晴らしい。一言名作といえる。

 しかし良くも悪くもエヴァ以降という印象が強い。あちこちに顔を出す世界の謎とやらが、むしろゲームとしての自由度を疎外してしまっている。ガンパレード・マーチという枠を逸脱する謎の数々は、理解されることを欲して已まない自意識を感じさせ、ここに手段と目的は齟齬を来している。同人誌的思い入れがたっぷりと、逸脱を許さない堅固さが息苦しく、故に私はこれを作品とは認めたくない。

以上400文字でした。


 以下、無責任な感想をいくつか。

良かった点

  1. なにをしても自由

     なにをしても自由というと語弊があるけれど、普通のゲームが持つ縛りをこのゲームは持っていません。

     例えば一般のRPGなんかだと「魔王を倒す勇者」としては生きられても、そこからドロップアウトすることは許されない。クエスト型RPGにしても、クエストは選べたとしても、どうしても冒険者でしかあれない。

     そうして考えると、このゲームは戦車兵として敵を倒すのが目的ではなく、前線配備の舞台でありながら学生という、その日常に身を置いて楽しむことが目的ということがわかってきます。与えられた環境で、生活者となって楽しむネットワークRPGに感触は近いのでしょう。

     だから戦車兵としてエースを狙うのもいいけれども、裏方に徹してもいいし、小隊内に何組カップルを作れるかというおせっかい仲人プレイを選ぶこともできて、それこそ目的を自分で作って自分なりの達成度を評価してやればよいというのは、本当に類いまれなゲームといえます。

     もちろん、ゲームとしての最終目標は一応用意されているので、それにしたがっても充分楽しいのですが、そこから逸脱してはじめてこのゲームらしさが見えてくるので、問われてるのはプレイヤーとしての資質ですよ。

  2. キャラクターが個性的

     登場するキャラクターはどれも個性的で、ちょっと身近にはいそうにないものから、普通に共感して普通に近しく感じられるようなものまで、実に色々。よい感じです。

     お気に入りは芝村(舞)、石津、森、壬生屋あたり。そのどれもがどこかに人付き合いの悪さとその寂しさというのを抱いていて、ああ、自分はこういうちょっと世間からドロップアウトする傾向にあるのが好きなんだなと、思わず明白になってしまった。対して田辺などはなぜかどうしても駄目で、眼鏡なのに、人間の嗜好というものは明晰に区分できるというものではないのです。

     え、男性キャラ? そ、そんなもんは知らん。

  3. 戦闘がよくできている

     戦闘は先読み先行コマンド入力型の、戦術型シミュレーションゲームといった感じで、実によくできていて面白い。敵の行動のパターンを読めば、どんな大群を前にしても無傷、あるいは損害軽微で圧倒することができるようにまでなれて、戦勝のカタルシスどころか困難な戦局を自分がひっくり返したというちょっとした英雄感まで味わえてしまう(けどちょっと空しいよな)。

     ただこの圧倒できるというのは曲者で、ある一定のラインを超えた時点で敵が単なる射的の的になってしまうという現象が発生して、空しいというか詰まらんというか、このへんのバランスは難しいんでしょうが、正直なんとか対応可能にして欲しかったところであります。


ちょっと困った点

  1. ちょっとイージー

     戦闘を楽しむのには頭打ちがあるとして、じゃあ後はなにして遊ぼうかというと人間関係しかないのであります。けれど人間関係もちょっとイージー。いやそりゃゲームだから仕方ないんだけど、世の中どうしても好きになれなかったりそりがあわなかったりがあるじゃないですか。ところがこのゲーム、それがない。毎日それとなく工夫しながら発言力を消費して話し掛けてやれば、いつしか親友だったり運命の相手だったりになれて、仲良くなれるのはうれしいけれども、こうも簡単だとちょっと張り合いが無い、というかやっぱり空しい。よっぽど皆から嫌われまくった状態でしかも経済的にも立場的にも困窮といったところからスタートというのでもなければ、どうとでもできるのだよ。

     だからやっぱりゲームと割り切らないといけない。いや、こんなことを思ってしまうというのは、それだけゲームがよくできてるということで。だって普通はこんなこと思いませんから(いつもは、一瞬で好感度をMAXにできるアイテムとか裏技ないかなとか思ってる)。

  2. 世界の謎はいらなかった

     世界の謎を追え、みたいなことが説明書に記載されておりまして、ガンパレード・マーチの世界には謎があるのだそうです。登場人物たちの話をよく聞いて、繋ぎあわせていけば見えるかも知れない。なかには嘘をついているのもいるからよく気をつけてね、みたいな話で、けれどこのゲームだけで本当にその謎はとけるんだろうか。それが疑問なのであります。

     ネタばれになりますが、例えば小杉のいうベルおとーさんというのが、アルファシステム(ガンパレード・マーチの開発元)の以前に出した別ゲームの登場人物ベルカインであるとか、そのゲーム(味のれんにおいてあったりする)の舞台世界が第四世界でありガンパレード・マーチは第五世界であり、第四世界での事件の発端となった武器が衛星軌道上を漂っていた士翼号に寄生したものが黒い月で云々、私はこういうのが鬱陶しくって駄目なんです面倒くさいんです

     一時こそは、なんらかの手続きを経れば謎は明らかになるんだろうと思い、世界の謎掲示板に居着いて、七千人委員会のひとりとして色々を見たり聞いたり書いたり嫌んなったりして、げんなりしてしまった。アルファシステムとしては、本来これほどの広がりを持つ想定のものではなかったのでしょうが、エヴァ以降、このような隠された謎を追うというのはポピュラーな楽しみになってしまって、エヴァ(エヴァンゲリオン)によって引き上げられたか、ガンパレード・マーチに世間がやっと追いついたか、なんだか閉じたところでやってるぶんにはよかったのが、自ら巻き込まれてしまって、もうお腹一杯だ。

     見ない知らないという選択もあったんだろうけれど、残念ながら見てしまったので後悔はやはり先に立たない。ただ僕は、ゲームにせよ音楽にせよ飲食にせよ、知識による裏付けによってそれを楽しもうというのではなく、そのものにただ相対することによって楽しみを得たい口なので、そういう手合は世界の謎には触れぬのがよしとここで忠言を呈しておきます。くーっ、なんか口惜しいぜ。負けた気分だ。


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公開日:2003.08.24
最終更新日:2003.08.24
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