【タイトル】 Lの季節 A piece of memories
【発売元】 トンキンハウス
【ジャンル】 ADV
【価格】 1999.8.5発売 \6500
【ハード】 プレイステーション
ゲーム進度:ルートレート、イベントグラフィックともに100%
一年が過ぎて、「Lの季節」をあえてまた評価してみたいと思ったのは、「L」のストーリーにわだかまる不条理さのためでした。正直、トリスメギストスの存在の唐突さは、「Lの季節」を傑作であると明言しながらも、受け入れがたいほどに異質です。異形がストーリーにかかわること自体は特に違和感なく受け入れられるのですが、それが世界の滅亡にまで及ぶ必要があったのか、そこまで大風呂敷を広げる必要はなかったように思えるのです。今まではそれに思いが及びながらも、あえて目に入らないようにしていました。
このような否定的な前提からはじめた二年目の「Lの季節」、しかし強いて批判的であればこそ「Lの季節」の本当の魅力が再発見されたように思えます。
大仰に構えすぎたストーリー、その反面独自性や意外性に欠けるところもある展開。ですが実際にプレイしその世界に身を置いてみると、それらの欠点をほとんど気にせずに彼女らの世界に没頭することが出来るのです。
その理由は、人物の描写の確かさにあります。登場人物十四人が何らかの形でそれぞれの過去、現在にかかわりあい、悩みながら苦しみながら、しかしそれを隠し毅然と、健気に生きている姿は、胸に兆すものがあります。特に現実界のメインの一人、星原百合を中心として渦巻くストーリーは圧倒的な情報量そして切なさをもって心に強く迫ってきます。
「Lの季節」パッケージ裏面に書かれた「求め合う12の魂の軌跡が織りなす彷徨と巡り合いの物語。」、嘘ではなく、まさにこのソフトの本質を端的に表している文章です。ただ欲を言えば、同じく書かれた「小さな運命の叙事詩」という文言を実際のものとしてほしかった、とそう思います。
少なくとも、この物語を彼女らの「小さな運命の叙事詩」と見るかぎり、他のどのソフトにも負けない傑作であると言えるでしょう。