世界樹の迷宮

アイテムについて

 『世界樹の迷宮』では、拠点となる街はひとつしかない模様です。故に、アイテムを購入できる店も一店舗のみ。それはシリカ商店。先代を継いだ娘っ子がけなげに武器から防具から消耗品から、冒険者のための役立ち品を売買しています。しかし、冒険をはじめた当初、この店舗の品揃えは極めて悪く、低レベルの冒険者ならともかく、腕に覚えのあるものならきっと素通りするに違いあるまいという貧弱さで、ではこのシリカ商店はどのようにして迷宮深部を攻める冒険者の眼鏡にかなう品物を揃えていくのかというお話。

素材を集める

 なんだか『だんじょん商店会』を思い出させるような書き出しですが、大丈夫、ちゃんと『世界樹の迷宮』コンテンツです。

 さて、以上のように非常に品揃えの悪いシリカ商店ですが、はたしてこんな店がひとつしかない『世界樹の迷宮』でより上位のアイテムを求めるにはどうしたらよいかという話です。とはいえ、拠点となる街をひとつしか持たないようなゲームは他にもちらほらありまして、そういうゲームがどうやって上位アイテムの入手をフォローしているかというと、敵が落とす宝箱からのドロップであるとか、あるいはシナリオの進度によって品揃えが充実するとか、やりようはいろいろあると思います。

 『世界樹の迷宮』において採用されている方法というのは、ドロップアイテム方式の変種といえるかと思われます。敵を倒すと、その種類ごとに異なる素材を落とすことがあり、それをシリカ商店に卸すことで新規アイテムが追加されるという、そういう仕組みになっています。なお、敵はアイテム(素材)は落とすものの金は落とさないため、金の入手はドロップアイテムの売却に頼ることになります。なぜ野生動物がお金を持っているの? という、RPGのご都合主義的お約束をうまく解消しているなというように思います。

メリットとデメリット

 この、素材アイテム売却により商店の品揃えが充実するというシステムは、ご都合主義をうまく避けると同時に、プレイヤーに何度も迷宮に潜ろうといういう気持ちをよく起こさせるという点で、非常によく仕組まれていると感じます。非常に特徴的なアイテムを落とす敵がいた場合、もしかしたらこれをいくつも集めるとなにかアイテムができるんじゃないかと、そういう予想が立つわけです。そうなると、一度通ってしまえば二度と立ち寄ることもなかったかも知れない場所に、その敵を倒すために再び立ち寄ることもある。なにしろアイテムの充実はゲームの楽しみのひとつでありますから、そうしたアイテム集めたい系プレイヤーに対する動機付けとして成功していると思います。

 しかし、デメリットもあるかなというのは次のようなケース。入手素材は必ずしも低レベルアイテムの材料から充実するとは限らないという点です。一体なにを集めたらあの防具になったかというのがわかっていないのですが、私の場合、非常に高性能の防具が結構早い段階で出現してしまい、その後いくつも出てくる防具は魅力に乏しいものばかりという、そういう状況に陥ってしまっています。早い段階で強い防具、武器を手にできたから有利な条件で戦える、そのこと自体は悪くないとも思うのですが、やっぱり入手したアイテム、防具はいろいろ試してみたいと思うわけで、けどあえてグレードダウンしてまで使う意味はないのですから、こうして使われないアイテムが山とある、非常に侘びしい状況が成立しています。

 もしこうだったらゲームの難易度はあがったかも知れないけれど、集まった素材分しか武器、防具、アクセサリはできないという仕様でもよかったかも知れません。素材売却でアイテムは並んだけれど、買ったら売り切れになる。もう一点欲しければ、また素材を集めてこないといけない。これをやると、欲しいアイテムが手に入りにくくなり、アイテムを必要数揃えるために、同じところで何度も何度も連戦しなければならなくなるという怨みもありますが、けれどこういうシステムでもよかったと思うのです、『世界樹の迷宮』では。現状だと、たまたまラッキーでいい素材を入手した、売った、上位アイテムが販売開始された、金さえあれば買い放題、とそんな具合で、だからうちではセカンドパーティがかなり充実した装備でスタートできてうはうはです。

 この、欲しいアイテムが全然揃わないという状況がいいというのは、あまりにもWizardryに飼いならされ過ぎたプレイヤーの意見かも知れません。前衛ひとりが非常にいい剣を持って、もうひとりはそこそこの剣、で、もうひとりはというと最初に買った剣のまま、みたいな状況が普通にあり得るゲームです。とにかくアイテムが揃わない。揃わないことが前提にあるため、いいアイテムが出たときの狂喜乱舞っぷりが違うのです。やった、やっと出たよ! という安堵と興奮の入り交じった独特の感覚。残念ながら『世界樹の迷宮』のシステムでは、これがありません。いや、まったくないとはいわないのだけど、けれどそれほど濃密であるとはいえない。このへん、ちょっと残念かなって思います。


世界樹の迷宮について :Index 「世界樹の迷宮」足跡を刻みつつ前進

公開日:2007.02.12
最終更新日:2007.02.13
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