シリーズ 旅行けばイタリア

トイレに関すること

 食べて飲んだ後はトイレの話でも。イタリアにおけるトイレとは、一体どういうものなのでありましょうか。それをちょっとお話ししようと思います。

イタリアの前にドイツの話

 なんでイタリアじゃなくてドイツなのか。いや、そんなにたいした理由ではないのですが、たまたまドイツでトランジットしたからというだけの話だったりします。けど、ほんの数時間の滞在だったのですが、そのトイレが印象的だったのでした。トイレが印象的といっても、TOTO製でないとかそういうことが印象的だったわけじゃありません。小便器の高さです。

 これが初の海外旅行になる私にとっては、フランクフルト空港が本当の意味での初の海外の地でした。ああ、憧れのヨーロッパ。ドイツは空港内の整然とした品の並びに思わず衝動買いしそうになったりして、買いそうになったのはリコーダーだったんですね。ドイツ語でブロックフレーテ。いやいや、こうした話をするつもりじゃなかったのでした。

 ドイツ人は大柄な人が多く、総じて男性は背が高いです。こうしたところが反映されてか、ドイツのトイレでは小便器の位置が高い高い。僕は身長が180センチありますが、それでもちょっと高いと思うくらいだったのです。背伸びまでする必要はありませんでしたが、けど身長低めで加えて総じて足の短い日本人なら、よほど使いづらいんじゃないかと、他人の心配するくらいに高かったのでした。

 まあ、ドイツ人がいくら大きいといっても子供の頃は小さいんだから、低い小便器もありました。だからそうそう心配する必要はないでしょう。けれど、多分僕は慣れれば、ドイツの高さの方が使いやすくなると思います。

イタリアのトイレはお金が必要

 これはよくいわれることですが、ヨーロッパではトイレを使うのにお金が必要だったりします。いや、別に自動販売機みたいになってるのではなくて、いやそういうトイレもなかにはあるみたいなのではありますが(お金を入れてはじめて扉が開く)、むしろもっと人間味あふれるやり方がとられています。

 トイレの入るところにおばさんもしくはおじさんがいるのですよ。そこでお金を払って中に進みます。トイレが有料というのは、つまりこういうことなんですね。フランス語では入り口にいるおばさんのことをダムピピ(dame pipiと書きます。翻訳はちょっとやめときましょう)といいまして、イタリア語ではなんというのでしょう。ちょっと分かりませんが、トイレをきれいにしてくれているお礼にチップを払うという感覚なのだと思います。最近のフランスではダムピピのいないトイレが増えてきていると聞きますが、私の行った2001年末イタリアには、大抵のトイレにこの役目の人がいらっしゃいました。駅にもいました、美術館もです。誰もいない場合でも籠やボウルが置いてあったりして、意外や皆さんきちんと払っているみたいです(とられたりはしないんでしょうか)。とにかく大抵のところではトイレが有料なんですね。

 無料のトイレももちろんあります。例えばデパートのなかなんかだと無料です。美術館も大抵はお金が要りませんでした。フィレンツェヴェッキオ宮殿はなんだかかわっていて、入り口近くのトイレではお金を払ったのですが、中に入ると無料だったりして、あの時はああ早まったと思いました。あとバールなんかのトイレも無料で利用できます。ですがトイレを使うためだけにバールに入るのもなんなので、大抵なにか頼むことになります。でも快く無料で使わせてくれたバールもあったので、これはもう店次第だなと思いました。

ミラノ北駅前にならんだお店 ミラノはミラノ北(マルペンサ)駅前の売店では、ちょっと様子が違いました。ずらりと並んだ長屋状の建物にトイレがありまして、でも鍵がかかってるんです。入り口には張り紙があって、使う場合は声をかけてくれみたいなことが書いてありまして、でいわれるままに隣のお店に声をかけたら、鍵を貸してくれました。こういうケースもあるので、イタリアのトイレといっても場合はいろいろです。ちなみにここのトイレは無料でした。ただ、あんまりうるわしくはなかった……。

 トイレ利用の相場というのも変ですが、そんなにたくさんのお金を払う必要はありません。手元にある小銭から適当に払えばいいのでして、でもだいたい五百リラ前後払っていました。五百リラというと大金みたいですが全然そんなことはなくて、日本円にしてだいたい三十円くらい。たいした額ではないのですが、無料が普通の日本のトイレを知っていれば、払いたくないと思う人もいるかも知れないですね。

 で、僕はどうかといいますと、支払い大歓迎でした。というのも、日本は無料はいいけどとんでもないところがあったりして、特に公衆トイレはひどいのがあります。バリアが張ってあるみたいに、ある一定の距離で近づけなくなるみたいなトイレに遭遇したことはありませんか? 僕はとにかくトイレというのが苦手で嫌いで、特に汚いのは駄目です。好きな人はいないと思いますが、とにかく汚いトイレは鬼門であります。けれどイタリアでは、バリアが張ってあるようなトイレを使うことはありませんでした。日本もこのごろはきれいなトイレを整備しようという動きがあって随分ましになっているようで安心ですが、もし昔のまんまだったとしたら――、お金を払ってでもきれいなトイレを使いたいです。

トイレに入ったら

 トイレに入ったら、まあすることなんてそんなにたくさんないのですが、問題はその後、水をどうやって流そうかというその方法です。イタリアのトイレは主に洋式(なんか当たり前すぎることをいってますが)で大抵が水洗です。この水洗の方法、これが意外や日本と違うのです。

 日本で水を流そうとすれば、大抵レバーを探しますよね。あるいはタンクに付いているノブでしょうか。日本における水洗トイレの方式といえば、レバーかノブがほとんどでしょう。けれどイタリアではそれらは主流ではないのです。これは意外な点でした。

 ではどうやって水を流せばいいんでしょう。天上からぶら下がってる紐を引っ張る? いやそうじゃないんですね(もしかしたらあるのかも知れんけど、少なくとも僕は経験しませんでした)。僕の経験した方式とは、そう、押しボタン式なのです。

 押しボタンといっても、小さなスイッチという感じではないんですよ。結構大きめの四角いプラスチックのオブジェ(板?)が壁にくっついていて、これを力強く押し込む。水タンクについてるのもありました(もちろんこちらは小さめ)。とにかく主流はボタン式のようでして、しかもこれがいくトイレいくトイレで違った場所にあるから、探さないといけない。人間が使うように作ってあるんだからちょっと考えれば分かるのですが、まれに本当に分からないのがあって、探し回ってようやく見付けるみたいなケースもありました。

 イタリアのトイレの水洗ボタン、ボタン式に慣れていない日本人には特に見付けにくくできてるんでしょうけど、けど、イタリア人でも簡単じゃないと思いますよ。

腰掛けるタイプのものを洋式と呼ぶのはいいとして、じゃあしゃがむのは単純に和式といっていいんだろうか?

 と、こんなに長い見出しでもって主張するのはイタリアの地でしゃがむタイプのトイレを見付けたからでありまして、しゃがめば和式って訳じゃないじゃんと思ったからなのです。けど、まあしゃがむタイプといっても、日本のものとは随分違います。

サン・ジミニャーノのトイレ 和式といわれるトイレとイタリアで見かけたしゃがむトイレの最大の違いは、いわゆる金隠しの有無でしょう。イタリアのトイレには金隠しがありません。なんといいますか、足置きまで一体になった陶製の便器はあまりにシンプルで、床にじかに置かれているみたいな印象です。

 これを見たとき思ったのですが、よく海外からきた人に日本のトイレはしゃがみます、座りません云々するやりとりは無意味なんじゃないかと。イタリアにこうしてしゃがむタイプのトイレがあるのですから、少なくともヨーロッパ人はこの手のトイレに慣れていると思うのです。じゃあわざわざ説明する必要ないじゃん、見りゃ分かるでしょうよ、ちょっとかたちが違うだけだし。

 ちなみに、少々うるわしさに欠けるように思えるこのトイレですが、これでも入り口でお金払っています。この辺のやりとりにはもう慣れてしまってましたが、それでもちょっと意気消沈したのを覚えています。

まとめ

 トイレは文化というか風習というかが濃縮されている部分なので、避けて通れないと思ったのです。けど実際に書いてみると、避けたいなあと思ったことがなんどかありました。平時とはちょっとちがった雰囲気でお送りいたしましたが、いかがだったでしょうか。意外といつも通りで違和感なかったりしましてね――、だとしたらショックですね。


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公開日:2004.09.18
最終更新日:2004.10.06
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