専門資料論

「書誌の必要性と基本的書誌について。」


 書誌とは膨大な文献、資料群のなかから自分が必要とする情報にアクセスするためのツールである。そのため自身が情報を求める場合であっても、また図書館で利用者に対してレファレンスを行う際にしても、書誌を活用できるかどうかが適切な情報にアクセスできるか否かの分かれ目となる。このため、情報を迅速かつ効率よく検索するための書誌に関する知識及び利用法を熟知することの重要性が生じてくる。

 書誌はその目的によって、文献の内容を端的に知ろうとする場合に用いられる書誌、必要な文献の所在を知るための書誌、求める主題における参考文献を知るための書誌、文献を管理保管するための書誌、などに類別される。しかしすべての書誌がこれらの類別によって明確に分類されるわけではなく、『日本全国書誌』が日本国内で出版されている書籍を網羅する全国書誌でありながら同時に国会図書館の蔵書目録としての性格を有するなど、複数の類別にまたがる性質をもつ書誌も少なくない。つまりは一冊の書誌であっても、その特性を熟知しているならば、様々な用途に使い得るというわけである。

 では実際の目的に応じて使い分けられる書誌の種類を挙げることにしよう。

 自分の求める主題に関する資料を検索するための書誌を知りたい場合は、解題書誌、書誌の書誌を利用することとなる。解題書誌とは様々な参考資料、書誌についての内容、特性に関する解説がなされたもので、文献検索の際のガイドともなる重要な資料である。書誌の書誌とはその名のとおり、主題別に書誌をリスト化したものであり、どの様な書誌が存在するかを一望するのに適した書誌である。

 著者名や書名などがわかっている場合に、さらなる資料の情報を欲する場合には世界書誌、全国書誌、蔵書目録、総合目録を利用することとなる。世界書誌は世界各国で出版されている資料を網羅するものであるが、完全なものは存在しない。しかしそれでも全世界でどの様な刊行物があるかを調べるには世界書誌が有効なのには変わりがない。全国書誌とは各々の国の出版物を網羅する書誌であり、主に国立図書館や全国規模の書籍出版協会などにより出版される。蔵書目録は図書館が所蔵する図書資料を目録化したものであり、複数の図書館の蔵書リストをまとめたものが総合目録である。総合目録は自分の求める資料の所在を知るために有効である。

 必要な出版物を購入しようと考える場合は、販売書誌、選択書誌を利用するのが便利である。販売書誌とは出版物の販売を目的に作成される目録であり、全国的規模の在庫目録として網羅的に書籍をリスト化している。またある一定の領域における資料を限定的に編纂した書誌として選択書誌があり、これは自らの求める領域と合致したものを利用するのがよい。

 自分が研究している主題に関する資料にはどの様なものがあるかを知りたい場合には、主題書誌、個人書誌、集合書誌、叢書集成・雑誌・新聞の書誌索引などが利用される。主題書誌は特定の主題に関する関係文献を収録するもので、様々な種類のものが存在する。個人書誌とは主題書誌よりさらに特定の個人に関する資料に限定して網羅したものであり、個人書誌の集積したものが集合書誌である。叢書集成・雑誌・新聞の書誌索引は叢書や雑誌などに含まれる各個の著作や記事などにアプローチするための書誌である。

 出版形態のジャンルからアプローチする場合には、特殊書誌、叢書集成・雑誌・新聞の書誌索引が利用される。特殊書誌とは特殊な刊行形式や出版期間或いは翻訳資料や音楽資料といった特殊資料のみを扱うものである。


ある日の書架から トップページに戻る

公開日:2000.08.23
最終更新日:2001.09.02
webmaster@kototone.jp
Creative Commons License
こととねは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示 - 継承 2.1 日本)の下でライセンスされています。