一念発起フランス語

仏語作詩で覚える単語と文例

授業九回目、いよいよ佳境

 ワールドカップ、フランスが敗退してしまいました。日本とベルギー、セネガルは決勝トーナメントに進出。どこが優勝すると思うと聞かれて、思わず脊髄反射でブラジルと答えてしまいました。多分ドイツなんじゃないかなとか思うのですが…… でも、日本とフランス語圏、頑張って欲しいものであります。

 授業は九回目にして、いよいよ佳境に入りました。今シーズン最終課の練習題を終了。後は追加の文章を残すのみです。非常に順調な進み具合であるといえるでしょう。本日の、テキスト以外の練習はふたつ。前回の宿題である、吹きだしが空っぽの漫画。各々が完成させたものを発表したのですが、全員がそれぞれに違うものに仕上がって、非常に楽しいものになりました。ある一定のシチュエーションが決まっていて、その状況に応じたダイアログを作成する題材として、漫画を使うのは非常に効果的であるなと感心するのでありました。そして、もうひとつの追加の練習。それは、詩を作ろうというものでした。これは前回の漫画とは違って、辞書を見てもいいとのこと。ただし、脚韻を踏まねばならないという本格派です。うひーっ、こりゃ難しい。というのも、普段脚韻なんて意識してませんから。辞書を繰って繰って言葉を探すのですが、なかなか思うようなものは見付かりません。ああ、脚韻辞典が欲しいよ。

 というわけで、今回は皆さんも詩を作ってみましょう。

フランス語で詩を作る

 フランス語で詩を作るといっても、なかなか簡単にはいかないものです。日本の定型詩といえば、五七五の俳句、五七五七七の短歌などがポピュラーですが、フランス語で詩を作るとなると、少々勝手が違います。それを作るというのだから骨が折れますね。

韻を踏む

 さて、フランス語で詩を作る際には、韻というものが重視されます。一口に韻といっても、頭韻(アリタレーション、フランス語では allitération )や脚韻(ライム、フランス語では rime )など、いろいろあって難しいのですが、今回は脚韻を用いて詩を作ります。

 一応韻を簡単に説明しときますと、類似の音を持つ言葉をフレーズの特徴的な箇所に持ってきて、響きのよさをととのえる詩法のひとつです。昔、漢詩などを勉強したときなどに習ったのではないでしょうか。このように、韻は洋の東西を問わず、詩を作る際に非常に重視されているもの、もちろん日本語でも韻を踏むことは可能ですよ。

 頭韻というのは、語の始めを同じ音調にそろえるもの、脚韻はフレーズの末尾を同じ音調に整えるもの。脚韻の実例を見てみましょう。

La Marseillaise
Allons enfants de la patrie!
Le jour de gloire est arrivé
Contre nous de la tyrannie
L'étendard sanglant est levé!
Entendez-vous dans les campagnes,
Mugir ces féroces soldats?
Ils viennent, jusque dans no bras
Egorger nos fils, nos compagnes!

 フランスの国歌、ラ・マルセイエーズです。この歌の各行末に脚韻が踏まれているのがお分かりになるかと思います。第一行と第三行の ie 、第二行と第四行の é 、第五行と第八行の pagnes (というか、おんなじ単語ですね)、そして第六行と第七行の a です。実際に声を出して読んでみれば分かるのですが、韻があるとないとでは、響きがずいぶん違います。なので、定型詩ではこの韻というものが、ことさら重視されるわけです。

詩を作る

 作詞の実習の前に、(おそらく)先生の作った詩が読まれました。第一行と第三行、第二行と第四行、第五行から第八行までの各行に、脚韻が踏まれていました。そして休憩開けに先生のおっしゃった、詩を作ってみましょう、韻をちゃんと踏んで、という言葉。われわれはその言葉を疑いました。いきなり詩を作ることになるとは…… 先生、本格的ですね…… いや、ほんまは嬉しいんですけど……

 詩を作るにはテーマというのが重要です、というものの僕は実感のないことが書けないという厄介なやつです。今一番身に迫ってることってなんだろう――と、ぺらぺら辞書をめくりながら考えていて、ああそうか、言葉とコミュニケーションをテーマにしよう、ということで第一行目ができました。

On habite au grand village

 一応、マクルーハンの地球村を意識しているのですが……

 この village に対応できそうな単語は沢山ありそうです。visage, usage, langage... ほら、沢山ありそうでしょ。けれど、ここまで具体性のないものがどかんと最初から出るのもあんまりかと思ったので、最初は身近な主体から始めましょう。ということで第一行目変更。 On habite... は第五行目に変更されました。で、新しい第一行目は、

Je toujour ramasse beaucoup de mot

 次いで、意味のつながりから第二行目も作りました。こんな感じ。

Pour renouveler un lexique dans ma tête

 なので必要になるのは、e で終わる女性韻と o で終わる男性韻。けれど e はともかく、o の音で終わる単語なんてそんなに知りません。というわけで、死ぬ気で辞書を繰りました。今日ほど、脚韻辞典が欲しいと思った日はありません(というか、普通の生活していたらいらないものですし)。

 こういう詩作をする人のために、脚韻辞典というものがあります。例えば、 Amazon.frrime dictionnaire をキーワードにして調べてみて下さい。そういう用途に特化された辞書が出てくるでしょう。うちにはこういう専門的なものまではないのですが、簡単な逆引フランス単語帳があったりします。すごい便利ですよ。同じ語尾を持つ単語を、ざくざく見つけられますから。白水社から出版されている、加藤林太郎著の『語尾からの配列による基礎フランス単語集』というのがそれです。詩やなんかに興味のあるかたには、非常にお勧めです。

 さて mot に対応するものとして、最初に候補になった(というか、偶然見つけた)のは、 par monts et par vaux 。山越え谷越えとか、あちこちとかいう意味の成句で、vaux というスペルで発音は o 。非常にポイントは高いのですが、いかんせんちょいと使いづらかった。なので、pot に変更。けどこれで、ちょっとおもしろい感じになりました。

Je toujour ramasse beaucoup de mot
Pour renouveler un lexique dans ma tête
Je le melange dans un pot
... quelque chose
On habite au grand village
...

 本日は、この四行を作ったところで時間切れ。つまり、残りは来週までの宿題になります。来週は、第一シーズンの最終回。はたして、わたくしの詩はどうなるでしょうか。乞う御期待です。


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公開日:2002.06.15
最終更新日:2002.06.22
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