歌のある店「ウラジーミル」

けれど僕は歌えない

 ロシア語会話の放送は、テキストを講読する前から、つまり真面目に取り組む以前から見ていた。それは番組の一コーナー、歌のある店「ウラジーミル」に魅かれてのためだ。陰鬱な雰囲気の中で歌われる、やはり陰影の濃い歌。だって、魅かれるのも仕方がないじゃないか。一度聞けば、囚われずにはいられない。

 というわけで昨年十月からテキストも講読、真面目に毎週番組を追う運びとなった。きっかけはシドニーオリンピックの体操だったりしたけれど、いずれロシア語は始めるつもりだった。予定が半年くりあがっただけだ。番組自体は昨年度の再放送で、つまり僕は再び歌のある店「ウラジーミル」と出会った。

 「ウラジーミル」で紹介されるのは、本当にいい歌ばかりだ。「心」、「金色の街」、「ただ一度だけ」、「黒いからす」そして「アルバートの歌」。聞くのは昨年に続いて二回目だ。だけれど、はじめて聞いたときと同じように心に染み入る、歌の持つ根源の力もしっかりと。

 それにしても、なんでこんなに暗いんだろう。恋の歌にしてもどことなく影があり、でありながら強い歌の言葉がコントラストも鮮やかに振りかかってくるようで、おそらく僕をとらえたのはこれだろう。もしはじめに出会ったのがフランスではなくロシアだったら、今僕はきっとロシア人になりたいと思っていたはず。それほどに強い歌の力が、ロシアにはある。いや、ただ単に僕が暗い歌好きなだけなんだろうけどさ。

 ウラジーミルにあうたび、僕は一緒に歌えないことにがっかりする。本当は一緒に歌いたいんだけどさ、けどさ、アルファヴィートが読めないんだよ。ロシアアルファベットがそもそも、普段見慣れたアルファベットとあまりに違うので、それらしくまねるのもすでに不可能。ファビエンヌとなら一緒に歌えるのに。

 そういうわけで、今の目標はウラジーミルと一緒に歌えるようになりたい。けど、その時にまで歌のある店、続いてるかな。


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公開日:2001.02.19
最終更新日:2001.09.02
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