映像の世紀

業の深さ、罪の深さにきっと涙してしまう

原題:映像の世紀
1995年/日本/750分

編集:NHK
共同制作:NHKエンタープライズ21
発行:NHKソフトウェア


 私はこの番組を本放送のときから好きで、再放送があるたびに全部見てきたくらいに好きで、だがその何度も見て内容も分かりきっているものを見るたびに泣く。我々の業を、罪を思ってやっぱり泣くんだ。

 十九世紀末期に映画が発明された。この映像の記録を可能とする新技術に人はときめき、精力的に映像を残してくれたおかげで、私たちは私たちの二十世紀を詳細に知ることができる。良いことも悪いことも、楽しいことも悲しいこともあって、映像は淡々とそれらを記録している。だがこのドキュメンタリーに見る二十世紀とは、私たちの負の部分によりなされたことの連続で、なんという時代があったものかと沈鬱させるものがある。

 まだ二十世紀だったころ、この番組を見て私は、次の世紀にこそ人類は、なしてしまったこれら悪を雪いで、よりよい世界を作り上げていくものと楽観的に希望していた。なにしろ差別や虐殺、破壊、戦争といった不幸に打ちひしがれ、いやというほどその辛苦を味わったのが二十世紀だったのだから。わずか世紀をまたいだだけで人類が変わるなどとは露ほども思わなかったとしても、新世紀を迎えて私たちが、前世紀どころかそのまた過去を引き摺り、無理解と未成熟をあからさまに推進することになろうと、あのとき誰が思ったか。

 それでも人類は、少しでもましな方向へ進もうとしているのかも知れない。少し進んでは退行を繰り返し、けれど最終の決算でプラスを記録すればいいのかも知れない。だが私にはこの今の動きが、プラスに向かうものであるとは到底思えないのである。幼稚さこそが明白になって、持ってしまった技術に振り回されているかのようだ。それこそあの宣言よろしく、戦争をこそ美しいと称賛しようというのか。

 問いへの答えは実にこれからだが、もしまた私たちの得るものが負であったならば、あの百年はただ流されてしまっただけである。そしてこの百年もまたきっと泣くのだろう。


評点:5


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公開日:2003.12.31
最終更新日:2003.12.31
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