ライフ・イズ・ビューティフル

かくも愛は惜しみなく

原題:La Vita e Bella
1997年/イタリア/117分

監督:ロベルト・ベニーニ
発売:アスミック(DVD)


 愛はある日突然降ってきます。グイドの愛も、まさに突然に降ってきたのでした。降ってきたのはグイドにとってのお姫さま、ドーラ。グイドは彼女に一目ぼれし、幾つもの偶然を、時には仕組みさえして、生涯の伴侶として迎え入れることに成功します。これこそ愛の勝利。この映画は、まさに愛の勝利を描いています。

 グイドが、むしろ逆境といえる状況から、ドーラに言い寄り、その愛を勝ち取っていく様は、滑稽ながらも大切ななにかを教えてくれます。それは、愛とは前に進むことであり、妥協しないことであり、そしてなにより相手を思いやること。グイドはドーラに、彼女の婚約者が与えられなかったものを与えることができました。愛は惜しみなく与える。彼は彼女に安らぎを、彼女が望む自由を捧げたのでした。

 ところが、息子ジョズエをもうけ日々を仕合せに暮らすふたりに、突如破局が訪れます。ファシスト政権のもとにユダヤ排斥の風が強く吹いた時代、イタリアはユダヤ系であるグイドにとって決して住みやすい国ではなくなっていたのでした。

 仕合せは理不尽に踏みにじられ、収容所へと向かう汽車よりも速く日常は無残に遠ざかってゆきます。災いは容赦なく奪う。人の明日とはかくも脆いものかと、前半分が楽しかった分だけ悲しさはつのります。

 収容所に着いたグイドは、ここでの現実をジョズエに知らせないため、嘘をつきます。すべてをゲームに装い、過酷な労働を堪えながら、彼はジョズエの前に楽しい日々を作り上げて見せました。堪え得ない毎日を堪え、ジョズエに、そしてドーラに明日への希望を見せ続けたグイドは、厳しい現実を舐め、飲み込まれていってしまいます。

 そんな彼が残したものとは一体なんだったのでしょうか。それは希望であり、文字通りジョズエの明日でした。愛こそが、命と身を削りつつも大切な命の糧を伝え繋げていけるよすがとなります。悲しいけれど、これこそが愛の勝利なのです。


評点:4


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公開日:2001.01.19
最終更新日:2001.08.29
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