あたしンち

家族への情は……ちょっと複雑

『あたしンち』1から7巻
けらえいこ
メディアファクトリー,1995- 年。


 この国のひとつの時代にいくつも幾つものバリエーションをもって広がった、あたしンちのひとつの克明な記録。その視点は鋭く精緻で、しかも暖かい。きっとけらえいこ自身も、描きながらむかついたりしてるんじゃなかろうか。とにかく、これは注目の書である。自分の母をくそばばあ呼ばわりしてむかついたことのある人は、ぜひ手に取らねばなるまい。

 大雑把で自己中心的でデリカシー皆無でとにかくいいかげんだというのに、妙なところでやかましい母。主にその母を中心として描かれた漫画、他人事みたいにして読めば文句なしに面白い。ああこんなことあったよ、うちもそうだったよと共感するところも沢山あるのは、さすがけらえいこの観察眼だと唸らざるを得ないんだが、始めは面白くほほ笑ましかったその共感も、だんだん度が過ぎてむかついてくるのはなぜだろう。ちょうどうちと同じ家族構成というのもあるんだろうが、おばさんというものの生態に、これほどまでの普遍性があるということに僕は驚いてしまうのだ。昔まだ若かったころは、ふとしたことから過去のことにむかついて、文句をいったりなじったこともあったっけなあ。思いだし笑いならぬ、思いだしむかつき? 最近はそういうのもなくなったが、みかんくらいの年頃にはよくあった。

 大きな事件も起こらない、日常の些事が割合淡々と描かれる家族ものなのに、とにかくこうも引き込まれてしまう。これは取り上げられる出来事のひとつひとつが、いかにもだれもが通ってきた、どの家庭にも起こりそうなことだからだ。もちろん立花家とうちは違う家庭だ、全く違うことも少なくなく、そういうことの方がむしろ多いかも知れない。けれどそれでも立花家にうちと同じものを見てしまうのは、描かれている家族の空気に、共通項を見つけ出してしまうからだろう。むかつきながらも結局読み終えて憎めないという所以――ここには、家族への屈折した情が確かにあるのだ。


評点:4


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公開日:2002.05.12
最終更新日:2002.05.12
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