経済ってそういうことだったのか会議

経済学って人の世を知ろうとする学問だったのか

『経済ってそういうことだったのか会議』
佐藤雅彦,竹中平蔵
(日経ビジネス人文庫)日本経済新聞社,2002年。


 虚学ばかりやって来た僕は、世の中のことを本当に知らない。とりわけ今の社会の仕組みを知らない。そんなわけで生活の現場では迷うことばかりなのだ。さすがに僕も空の鳥じゃないので、明日を思い描き将来設計を立てないことには生きにくいと気付きはじめて、だもんで経済学をちょっとかじってみようと思い立った。けれどいまさら小難しい本を読むのも億劫だし、――というような人にこそお勧めなのが本書である。

 著者は経済財政政策担当大臣の竹中平蔵とだんご3兄弟の佐藤雅彦。緑の可愛い表紙にちょっとほかにはない書名の付き方なんかは佐藤雅彦の味が出ていて、買いやすくまた手元に置いておきたいと思わせる。しかし問題はその中身。一読すれば気付くだろう。ものすごくわかりやすく経済の仕組みや原理というのが説明されている。もしかしたら経済ってのはそんなに難しいものじゃないかも知れない、と思うほど素直に飲み込めてしまう。

 佐藤雅彦という人が真っ直ぐに根本的なところに切り込んでいくのを、平蔵さんがしっかりと受け止めて平易な言葉で答えていくのが素晴らしい。これほど分かりやすく説明できるというのはよくよくものを分かっていないと無理である。だからこの竹中平蔵という人はよほどの識者で、加えて僕たちに近い感覚を持っている人なのだとわかる。そして竹中平蔵の解説を受けて、広げてみたり深めてみたりの佐藤雅彦もただ者ではない。勘所を押さえた竹中語録にほっと一息つかせる一コマ漫画も気が利いていて、この一冊に関わったものすべての水準の高さを思い知る次第である。

 そして読み終えてみて、この国には明日はないんじゃないかって悲観的なのである。僕は平蔵さんの支持者である。その彼の裾を引く日本の構造を見て、本気で変わろうという危機感を持たないこの国はもう駄目だと思った。せめて冷徹に世の中を見てやろうと思い、その一歩を押したこの本はやはりすごいのである。


評点:5


耳にするもの目にするもの、動かざるして動かしむるものへ トップページに戻る

公開日:2003.04.17
最終更新日:2003.04.17
webmaster@kototone.jp
Creative Commons License
こととねは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示 - 継承 2.1 日本)の下でライセンスされています。