なぜ、男は「女はバカ」と思ってしまうのか

男の女を理解できないこと斯くの如し

『なぜ、男は「女はバカ」と思ってしまうのか』
岩月謙司
(講談社+α新書)講談社,2003年。


 私の知り合い関係は七八割方(あるいはそれ以上)が女であるため、女性心理には詳しいほうだと自讃している。だがそれでも埋められない部分がある。趣味嗜好が女性寄りと自認する私であるが、にもかかわらずすれ違いはなくならない。当たり前だ男なんだもの。私はすべてを逐一分析し言語化しようとする男性的脳の持ち主である。だがそれでも理解の努力は続けている。

 本書は、かつてのベストセラー『地図が読めない女』の一系列と考えてほぼ間違いない。より平易な表現で、女性のする考え方や理屈を解き明かそうとする試みである。当たり前のことが当たり前に書かれているに過ぎないが、人によれば新たな発見があるだろう。男にとっては理解しがたい女性を解明する一助として、女にとっても理路整然と把握しきれているわけでない自分を知る手がかりとなるかも知れない一冊である。

 この本には長所がひとつある。分かりやすさである。簡単な語彙と言い回しが読解を妨げず、また例が適切である。『地図――』はバタくさい例に共感しにくく感じることもあったが、本書のそれはなるほど日本人向けだ。すらすらと読んでそうだったかとうなずき、面白がれるのは実によい。だがそれ以上を求めるととたんに物足りなく感じてくる。それはどうかと疑問が沸いてくるのである。

 妙な修身臭さが引っ掛かってしまった。女性は汚染されやすいという表現が目立った。故に女は自身を守らねばならないというに至っては閉口した。汚染云々という言は、女は汚れなきものという前提があってのことである。仮に女が汚れやすいとしても、それほど潔癖でばかりあるのが女だろうか。女性への幻想の強さ、旧態依然とした女性観の先立つのを感じずにはいられなかった。ここに旧い男性の処女崇拝的な枠を見てしまったのである。

 著者は科学的に女性を知っているのかも知れないがそれでも男である。男は女を実感しえないと結論するよりなかった。


評点:2


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公開日:2003.01.30
最終更新日:2003.01.31
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