WAKI WAKIタダシさん

変わり者を描かせるならこの人こそが素晴らしい

『WAKI WAKIタダシさん』1巻
阿部川キネコ
(BAMBOO COMICS)竹書房,2004- 年。


 私は曲がっている。体が、背中が、すっかり曲がってしまっている。毎日の消えない疲労感は、体のゆがみが原因だろう。鏡の前に立てば両肩の高さが一目でわかるほど違っていて、これは多分ギターのせいもあるなあ。体のゆがみは万病のもと、なんとかまっすぐにしたいものだ。

 阿部川キネコの漫画はどれも少々癖があって、だけど本作はちょっとおとなしめにまとまっているから、初心の方にもお勧めだ。曲がっているのが許せない整体師の正さんとその妻を軸に、ちょっと変な人たちが集まるギャグコメディで、構成やなんかは非常にシンプルでオーソドックス。四コマ漫画としては少々破格かもはしれないが、最近の漫画になれている人ならなんの戸惑いもなく入っていける、まさに阿部川キネコ入門編といえるだろう。

 整体師が主人公の漫画であるが、これを読んでも整体に詳しくなれるわけではないところが、実にすがすがしくてよいのである。厳格なまっすぐ好き整体師の偏執的な情熱、とぼけたコスプレ妻に、彼らの関係を勘違いしている妄想娘など、極端な人たちの極端な行動が過激に描かれて、現実を飛び越してしまっている。だがこうした現実とのずれこそが面白さである。岡田あーみんに傾倒した人ならば、懐かしく当時を思うこともあるのではなかろうか。しかしキネコはあーみんとは違う魅力でもって、変わり者たちを身近な人と感じさせて、さらには私も秘める変わり者の芽が、彼女によって開花させられようとしているのがわかる(いや、人のせいにしてはいかんと思ってはいるのだが)。

 ところで、実は整体は危険だったりする。特に脊椎や頚骨周りとなれば、失敗が致命的でさえある。だからよい整体師を見付けるのが重要であり、これがなかなか簡単には見つからないため、私は体のゆがみをただせないのだ。もし通えるところに四瀬整体医院があったなら私はぜひ通いたい。この人になら任せて構わないと思えるのである。


評点:3


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公開日:2004.05.13
最終更新日:2004.05.13
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