『「私が、答えます」――動物行動学でギモン解決!』
竹内久美子
文藝春秋,2001年。
日頃そんなもんだと思っているが、よくよく考えれば疑問なんてことはよくある話。不良系の男のほうがよく女にもてるのはなぜか。息子は母に、娘は父に似るという俗説。こんなのは迷信、俗信だと退けてしまうのは簡単だけれど、動物行動学的見地からすれば理由も理屈もあるらしい。当たり前だと思っていたような自分の行動も、遺伝子をよりよく残すための理由ある行動だったとしたら?
動物行動学というのは、自分の遺伝子をいかにして残すかという命題のもとに行われる、動物の営みに関する学問だ。どんなに些細で無意味に思えるような行動に関しても、遺伝的メリットを考えれば意味が出てくることがある。この遺伝子を残すという命題は、われわれ人間にとっても他人事ではないのだから、この学問は誰にとっても面白いに違いない。
マスターベーションの意味。異常に肥大したペニスの謎から、姑が嫁をいびる遺伝的メリット。こんな日常の、些細な出来事。当たり前だと思い、理由など考えてみたこともないこれらが、遺伝子をよりよく残すための作戦だったとは! こういったことごとが、親しみやすい筆致で、しかもおもしろおかしく説明される。この本は、まさに希有といえるだろう。
僕個人の関心からいえば、音楽家にゲイが多いのはなぜか? この一見関係ない両者に因果関係を見いだせたときの喜びったらなかった。そして、自殺傾向についても。表沙汰にはしないが、僕は日々自殺を思っている。その傾きに嫌気がさし、鬱もなお強まるという悪循環。ところが、そういった傾向が「自殺体質」にもとづくものと簡単に説明されて、なんと心が軽くなったことだろう。
この本は、自分を知り、よりよく今日を生きるためのこつのようなものを得るきっかけをもたらしてくれるかも知れない。とにかくなんでも知っておきたいと思うあなたにもおすすめ。ただ、謎は謎のままにしておきたいと思う人は、やめたほうがいいかもね。
評点:4
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