君は八の字巻きができるか。私はできる。なぜか? 学生時分のバイトで、散々やらされたからだ。学生時代のバイトというのは、驚いたことに全然音楽とは関係なくって、同時通訳関係の設営をちょっと手伝っていたのだった。
八の字巻きというのは、ケーブルの巻き方だ。ケーブルを巻くときに、同じ方向にばかり巻くのではなくて、正逆正逆となるよう、交互に巻いていく。こうして巻いておくと、ケーブルをほどく際に絡まったりもつれたりしなくなると聞いた。なので、ケーブルを巻き取るときは常に八の字巻きだった。これができないと仕事にならないので、最初の仕事は事務所で八の字巻きになれるというものだった。
シールド線も八の字巻き。なんてったかなあ、無線電波を飛ばすための線も八の字巻き。新しいケーブルが入荷したら、全部ほどいてしまって八の字巻き。こうして八の字巻きの癖をつけていくのだ。
八の字巻きにするのは、ケーブルをほどきやすくするというためだとはいった。けれど実際に長いケーブルを巻いていると、これだけが理由ではないような気がする。ケーブルのねじれが、一方向に巻くよりも少なくなるようなのだ。
太いケーブルだとわかりやすいのだが、ケーブルを巻いて手に取るという動作により、ケーブルにねじれが生じる。最初のうちは気にならないが、長く巻き続けていると、蓄積したねじれのためにケーブルがくるくるとよじれて絡まってしまう。八の字巻きだと、このねじれが出にくい。
しかし、八の字巻きの効用はこれだけではないみたいだ。長いケーブルを使いきらず、一ヶ所に巻いて束ねて使うときに重要な意味がある。八の字巻きは、交互に巻くためにノイズやなんかの影響を受けにくくなるというのだ。一方向だけにくるくる巻いていくと、コイルと同じようになってしまい、ノイズに弱くなるらしい。
電気的なことに関しては私はよくわからないので、棚レコードはDOMON CABLEで公開されているベースアンプ、ギターアンプの使いこなしのノウハウ その2に譲ろう。私の説明なんかより、ずっと信頼性が高い。
八の字巻きのやり方を文章で説明するのはややこしいので、ここは有用なページを紹介することにとどめよう。不二音響株式会社のサイトにて、PAシステムの雑学講座が公開されている。そこに写真入りで八の字巻きが紹介するページがあるのだ。その名も八の字巻きのやり方。写真もあり、説明も丁寧なので大変わかりやすい。