レスポールLPC-80の到着

前回までのあらすじ

 うちにやってきたレスポールLPC-80であったが、楽器裏面に打痕があることが発覚。どうやらそれは運送中の事故によるものであり、到着したその日のうちに楽器は九州に帰っていってしまった。

 離れ離れになる一人と一梃。果たしてどのような運命が待ち受けているのか。

 愛と感動のレスポールLPC-80顛末、これが最終回。

楽器の状態

 楽器裏面に発生した打痕。直径1センチに満たないくらいの小円形に塗装表面が割れていて、うまくすれば打撃は塗装面だけにとどまっているかも知れない。しかし楽器屋からの連絡によると、打撃は塗装面を抜け着色層のすぐ下まで傷ができていたという。この報告に正直くらっと眩暈する気分だったのだが、木を埋めるまではいかず、目止め剤を使う程度にとどまったということに少々安堵した。

 楽器の傷といっても、まったくのボディ裏であるから音に影響するような部位でなかったのは幸いだった。逆にいえば、ここが一番傷みやすい部分だったかも知れない。見た目よりずっと重いボディ。荷の下部にあたるボディだから打撃を受けやすいのもここ、重さゆえに衝撃も大きかったと推測される。

 しかし、この損傷がネックや、弦、ピックアップがあるボディフロントに生じていたら、その方が深刻だったろう。

 修理の工程は、目止め、着色塗装、クリア塗装となり、それぞれに乾燥、サンディング、バフがけが必要。全部で二三週間かかるだろうという。正直三週間は長いと思われた。

待つ間

 なので待つ間を有効に使うべく、アンプを買いに行ったのだよ。なので楽器を待つ間、アンプは孤独に待っていたのであった。

 楽器返送時にシールドは手元に置いていたため、ちょっとした興味からチューナーをアンプに接続してみた。チューナーの発信音を増幅できるかと思ったら、そういうものではないものみたい。ちょっとがっかりしたが、楽器とアンプの間にチューナーを挟んで、チューナー音もアンプにいったらそりゃ使いにくいわな。

楽器到着

 楽器が修理を終えて発送されたのは、楽器の状態報告を受けてからちょうど二週間が経った日のことであった。発送のメールには度重なるお詫びと、楽器とシールドを別包で送るとあって、あれ、シールドは手元にあるのに、疑問に思いメールを出したら、迷惑をかけたお詫びとしてシールドをつけたということで、逆に申し訳ない、感謝する気持ちになった。

 重装備で送って欲しいとお願いしたものだから、本当に楽器は重装備で届いた。一番外側にギブソンの箱、さらに箱、最後に本来の箱、そして楽器だ。これは驚いた。ここまで巨大に、重装甲になってくるとは思いもせず、また感謝する気持ちになった。

 楽器をあらためる。裏面、傷跡らしいものはまったく見えなかった。一体どこまで塗装を剥がしたのか、その痕跡も見えなかった。すごいな、リペアマンって。まったくの鏡面に、もし傷を確認しようと思ったらX線を使うほかないだろう。

名付け

 このことがあって、楽器に対する愛着が深くなったのは事実である。こうしてひとつひとつ歴史みたいのが重なっていって、人も物も深まっていくのだろう。なので私はこの楽器に名前を付けることにした。今回のことを踏まえ、しかしそれを恨みに思ってのものではない。

 楽器に与えられた名前は、Pointed Back。点を打たれた背板である。Pointedは鋭いとかとがったという意味のある形容詞でもあり、もしかしたらとがった背中と思う人もいるかも知れないが、点を打たれた背板である。

 来歴とともにこの名前、意外と気に入っている。弾いてみれば音も悪くない。なのでやはり気に入っている。


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公開日:2003.12.20
最終更新日:2003.12.20
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