ジョルジュ・ブラッサンス『オーヴェルニュの人にささげる歌』

Georges Brassens « Chanson Pour L'Auvergnat »

 いうまでもなく私がギターを始めたのは、歌うときに伴奏が欲しかったからであって、このところそうした歌いたい熱が高まっていて実によい傾向だ。歌っているのは主に日本語の曲であり、まれに英語の歌。だが本来歌いたいと思っていたのはシャンソンだったはずなのだが……

 そんなわけで、つい先日突然ギターを弾いているときに歌いたくなったのが、この『オーヴェルニュの人にささげる歌』だ。詩の内容はといえば、苦境にあったときに親切にしてくれたオーヴェルニュの人に親愛と感謝をささげるもので、いうほど苦境ではないが日々寂しく生きている自分にはうってつけの歌である。いや、先日この歌を突然歌いたくなった背景には、実際侘びしさを漠然と感じていたからなんだが、こうした寂寥感にはフォークやブルースなんかよりもシャンソンが似合っている、と思う。

 だからブラッサンスのシャンソン。シンプルで親しみやすくて深い。

楽譜を入手

 さて歌いたくなったとはいえ、悲しいことに詩を半分忘れてしまっていて、歌うに歌えなかった。メロディにしても、いくぶん怪しいところがある。

 楽譜の入手が先決と判断した。

 楽譜といえば、大学の図書館にはブラッサンスばかりを収録した曲集があって、ピアノ伴奏とコードネームが付いていて便利だった。けれどいちいち大学なんかに寄ってられないので、自分の蔵書でなんとかしてみようと思った。

 昔、NHKテレビのフランス語の番組に、「ファビエンヌと歌おう」という人気コーナーがあった。そこでこの歌が取り上げられていたはずなので、ちょっと調べてみた。といっても、自分のサイトに曲目リストを載せているから、あっという間に見つかるんだけれども。

 番組で紹介されたのは2000年の7月と判明。テキストを引っ張り出してみると、楽譜がきちんと載っている。思えば、この時期のこのコーナーはきちんと楽譜を載せてくれていたので、本当によかった。けれどちょっと前から楽譜を載せなくなって、今は歌詞も曲名も載せなくなってしまった。これはちょっと寂しいのである。やっぱり、楽譜が載っているというのは嬉しいものだ。

コードネームの判定

 さて、楽譜を引っ張り出してきたら、今度はコードを調べないといけない。最初思い出し思い出し歌っていたときは、Amで弾いていた。ベースを1小節ごとにラミラミとやれるので都合がよかったのだが、楽譜を見てこのキーで歌うのは断念。最高音がラになってしまって、自分の声域ではちょっと苦しい。なので、楽譜にある通りEmでやることにした。

 コードの判定はそれほど難しくなかった。適当に音を合わせながら、歌いながら、しっくりこなかったら音符を見てコードを違うのに置き換えながら、そうして拾ってみたのを以下に示そう。なに、自分が拾ったものだからして多分に怪しいところもあるのだが、そういうところは気にしてはいけない。

オーヴェルニュの人にささげる歌(コード進行のみ)

Key Em 3/4 Moderato de Valse
 |Em-|Em-|B7-|B7-|

 |B7-|B7-|Em-|Em-|

 |Em-|Em-|B7-|B7-|

 |Em-|Am-|B7-|B7-|

 |Em-|Em-|B7-|B7-|

 |B7-|B7-|Em-|Em-|

 |Em-|Em-|B7-|B7-|

 |Em-|Am-|D--|D--|

 |Em-|Am-|D--|D--|

 |G--|C--|D--|G--|

 |G--|C--|D--|G--|

 |B7-|B7-|Em-|Em-|

 |C--|C--|B7-|B7-|

 |Em-|Em-|B7-|B7-|

 |B7-|B7-|Em-|Em-|

 |Em-|Em-|D--|D--|

 |C--|Em-|Em-|Em-||

弾き方

 弾き方というのは実にシンプル。楽譜にはワルツと書いてあるので、素直にワルツっぽく1拍目にベース音を、2, 3拍はi, m, a指で上声部を弾いてやると、それだけでそれっぽくなる。速度はモデラートとのことだが、なぜか弾いているとどんどん速くなってしまって、全然中くらいのテンポじゃなくなってしまう。まあ、ちょっと速めが気持ちいいんだから、気にせず弾いていこう。

 この曲の気持ちのよさは、トニックとドミナントの交代を基調としたシンプルな前半を終えるや、トリオに並行長調が現れるところにあるのではないだろうか。歌詞の内容も、前半には苦しいときに親切にされた状況を、トリオにはその親切がどれだけ心身を暖かにしてくれたかということを表現して、曲調と歌詞が寄り添うようである。曲の最後、再現部にしても、トニック、ドミナントの交代の再現と思いきや、そうではなく、明るさを多少湛えた、曖昧でコントラストの弱い、しかし非常に印象的な終止が美しく救いを感じさせてくれる。

 というわけで、しんみりと悲しいときにもよくマッチし、けれど落ち込むばかりでないほの明るさが暖かい妙曲である。とりあえずしっかり覚えて、レパートリーに加えてしまいたい。


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公開日:2004.06.12
最終更新日:2004.06.12
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