ボトルネック

 例えば一日どこに行く予定もなくて、起きてから寝るまでギターを弾ける日があったとして、しかもなんだか調子がよくって本当にまったくずっとギターを弾いて、途中でいつもならエレキギターに持ち替えるのに、よりによって面倒くさかったとかいう理由で、弦高も張力もエレキギターよりずっと高いフラットトップギターを弾き続けたとしよう。そうすると大抵翌日は、押弦する左手指先が腫れてしまっていたりして、ギターを弾こうにも弾けなくなってくる。

 痛かろうがなんだろうが、それを押してギター弾き続けるというのがギター偉人への道なんだろうが、残念ながら私はそういった根性って奴を持ちあわせてはいなかった。だもんで、右手左手それぞれの基礎練習をやっつけただけで撤退。けれど時間はまだ余裕がある……

 ボトルネックを買っといて良かったと思える瞬間だ。

ボトルネック

 ボトルネックというのは、主にブルースギターやハワイアン――スチールギターで使われるもので、左手指にはめて使うガラスや金属製の筒のことだ。大抵薬指か小指にはめて、これで弦を軽く押さえてやると独特の音になって面白い。弦は指板どころかフレットにも触れないので、なめらかなスライディングやビブラートが可能で、これもボトルネックの特長になっている。

 なんでボトルネックというかといえば、もともとは酒瓶の首のところを切ってそれを使っていたから。ボトルの首でボトルネック。けれど今ではそんな手間なことをしなくても普通に楽器屋で買うことができるし、材質もガラスだけでなくスチールやブラス、陶製のものなど、色々選べる(もちろんそれぞれに音が変わってくる)。

 ボトルネックとはいうものの別に瓶の首にこだわる必要なんてのもなくて、小さなガラス瓶(細長いのがいいね)や電池なんかを使うこともできて、高校のころ、クラブ活動中に学校備品のギター持ちだして、電池でスライド遊びをして楽しんでいたもんだった。

 でも電池は表面の塗装が落ちて、弦に残ったりするんで嫌なんだな。でもまあそれは好き好き。弦はいずれ替えるもんだし、気にするもんでもないのかも知れない。

メディシンジャータイプのスライド

 私のボトルネックは、ジム・ダンロップ社製の薬瓶(Medicine jar)タイプHeavy Wall Thickness: 274 Small sizeというやつだ。肉厚のタイプにしたのには別に意味や好みといったものがあったわけじゃなくて、自分の細目の指にはまって落ちつくのはミディアムよりもスモールサイズであって、楽器屋にあったのがミディアム・レギュラーとスモール・ヘビーだったというそれだけの理由だったりする。

 けれど手が大きいわりに薄い自分には、ボトル自体に重さがあって安定しそうなヘビーの方がよかったように思う。自信をもっていえるほどじゃないけれど。

スライドで弾く楽しみ

 スライドでギターを弾くのは意外に大変だ。面白いように音程が変わるから、全然安定せず微妙な差が実に気持ち悪い。しっかりと手元を見て、フレットの真上辺りにスライドを止めてやらなければならないんだが、グリスアップしてきて調子に乗ってうっかり行き過ぎ、聴覚上の大ダメージを得たりできるのは、スライドならではだろう。

 ハイフレットになるとフレットの真上では音程が低くなるような気がするんだ。普段押弦するときは指板から弦の距離分だけチョーキングしているのと同じだが、スライドだとそのチョーキング分の音程上昇がない。だから心持ちフレット位置より高めに弾かないと、非スライドで弾いてるときの音程は出ないんじゃないだろうか。

 ともあれ、フレットの制約を受けないスライドでは耳が頼りであるので、いつも以上に耳の判断をシビアにしないといけない。しかしその反面、押弦時よりも簡単に純正律的音程を得ることができるわけで、その感覚はバイオリンやベース(すべてではないけど)などのフレットレスの楽器に近いはずだ。

 指の痛みは中一日置いてやると問題ではなくなるので、スライドで弾きまくるのはなかなかできないけれど、暇があればスライドで遊んでると、それだけで得られるものは多そうだ。うん、スライドにはまってみようか。

楽器との相性

 スライドで弦を押さえるとはいえ、フレットに触れるほど押さえては意味がない。なのでスライドに向くギターの条件は以下のようになる。

 弦高が高いほうがいいのは、簡単にフレットに触れないからというのが理由。実際スライドを多用するブルースギターとかリゾネーターギターとかは、弦高高めの楽器が多い。

 弦が太めのほうがいいというのは、弦が細いとテンションが弱くなりすぎて、第1弦とかが簡単にフレットに触れちゃうのね。だからあまり細いゲージだと弾きにくい。今使っている弦はライトゲージだけれども、それでも1弦を弾くのは神経を使う。ミディアムゲージくらいがいいんだろうか。

 今私の楽器は乾期に入ってきているので弦高が低めになってきていて、スライドにはちょっと向かなくなってきている。加えてスライドの醍醐味を満喫できるオープンチューニングは、戻すのが面倒だからという理由で今のところ考えていない。

 ということで、スライド専用にギターが一本欲しいな。順反り気味の、コンディションはちょっとくらい悪くてもいいから、スライドが楽しそうなギターが欲しいな。

 夢のまた夢だけど。


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公開日:2003.08.05
最終更新日:2003.08.05
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