扇風機のかかっている部屋でギターを弾いたら、ギターの音が宇宙人の声になってしまう。宇宙人の声というのは、ほらあれだ、子供の頃誰もがやった、扇風機に向かってしゃべると声がわわわわとなる、あれのことだ。しかしだ、声がわわわわとなるのは楽しい――楽しかったが、ギターがわわわわとなるのはちょっと困る。別に宇宙人のギターって訳じゃないもんなあ。
昔サックス吹いていたときもわわわわってなって、だから練習中には扇風機を止めていた。練習するときは、指まわりやなんかの機械的な要素も大事だが、なにより音が大切なのであるからして、宇宙人の音ではどうにも練習にはならんのだ。
だから扇風機は練習の敵だった。
そして、冷気も練習の敵だ。こちらはどちらかというとメカニックの敵。ああ、楽器のメカニックじゃなくて、人間のメカニックね。腕や肩を冷やすと腱鞘炎の原因になるから。それに楽器に冷風が当たると、呼気に含まれる水分が結露して、楽器にはあまりよろしくない。と、これはサックスの話だ。
ギターの場合はどうなんだろう。私は電気代に配慮して、冷房は使わないようにしている。基本的に冷房に弱い対質ということもあり、ギター弾く時は冷房も扇風機も止めて、暑さに耐えているのだ。けれど楽器にはあんまりよくないんだろうな。気温が下がると相対的に湿度は上がるはずだから、少々気温が高い方がいいと思うんだがどうだろう。いや、どうだろうといわれても困るよな。私も困っている。
ともあれ、扇風機が楽器の音を宇宙人ライクにすることは知っていた私であるが、まさかギターも同じであろうとは思わなかった。扇風機は部屋の反対側にあって、直接風が当たらないようにもしてるのに、宇宙人ライクの音になってるのに気付いたときにはびっくりした。
気付いてからは、ギターを弾く時には扇風機を止めるようにしている。けれど夜に練習するときなんかは近所に配慮して窓を閉め切るから、扇風機をかけるんだよね。程々の暑さなら我慢するさ。でも、今年の夏は我慢できず、けれど可能な限り遠くに追いやっているから、あんまりかけてる意味はないような気もする。