YUZO Birthday Live 2005 with YUZO BAND

 伴奏合わせの帰り、夜の十三駅で同じようなギターケースを持った人を見かけて、そうしたら向こうもこちらに興味を持ったようで、そんなひょんな出会いがあったのだ。いろいろ話をして、来週ライブをやるからよかったらきてよとチラシをもらった。

 その人が豊田勇造。サイトを見つけ、プロフィールを読めば、本当のプロであった。

 そうとは知らず話していて、ものを知らないということは恐ろしい。ともあれ、豊田勇造氏は気さくな人であった。

拾得

 Birthday Liveは毎年恒例で、このライブのために全国各地からファンが集まってくるという。今年2005年は7月2日午後6時30分から。場所は拾得だ。

 拾得については、名前こそはさすがに聞いたことがあったが、いくのははじめてだ。これも調べてみれば、酒蔵をそのまま使ったライブハウスであるそうだ。ただ、サイトによればコーヒーハウスであるらしい。だが、いってみてみれば、コーヒーハウスという雰囲気はなく、なんだか居酒屋みたいだ。メニューには玄米定食というのがあって、本当になんか独特な感じがする。実際、ライブ開始を待つ間、玄米定食を食べる人はかなりいて、その雰囲気は今までいったどのライブハウスに比べても、特別な感じがしたものだった。

ライブの開始

 今回のライブは三部構成。ただ、構成についてのアナウンスは最初のステージが終わったときにはじめてなされた。なので、第一部はそうしたことを知らず、ただただなにがはじまるかと期待して聴くばかりだった。

 客層は、さすがに年齢高目で、しかし面白いのはそのフレンドリーさだ。隣に座った女性と親しく話をして、向かいに座った夫婦とも仲よくなった。こうした、簡単に話をして、親交を深められるような空気が自然に流れている。これは年齢のせいか、あるいはある種の時代を共有する人たちの人懐こさなんだろうか。すごく私には嬉しい場所であったよ。

第一部

 第一部は、勇造氏とYUZO BANDのステージ。申し訳ないが、曲目は案内できない。なぜなら、私は曲名をまったく知らないからだ。いや、覚えているのがあった。『ジェフ・ベックが来なかった雨の丸山音楽堂』。正直、すごいタイトルだと思う。いや、タイトルだけじゃない。曲がすごい。歌詞もすごい。周りを見渡せば、もうみんなのりのりじゃないか。実際私も足を踏んで、あれは引き込まれないほうがおかしい。

 ああ、なにを説明したらいいんだろう。なにを書いたらいいんだろう。正直、私は詳しく覚えていないのだ。なんかあっという間に第一部は過ぎてしまった。翻弄されて、あれよあれよという間に終わってしまった。だから、書けない。だって、すごかったとかよかったよとか、そんなの書かれたって困るでしょ。

第二部

 第二部は、勇造氏いわくソロのセッション。勇造氏がギブソンJ-200一本もって、ハーモニカホルダーを下げ、静かないいステージだった。いや、静かなばかりではないのだけれど、それはもちろんのりのいい曲もあるし、ベースやキーボードが加わった曲もあって、しかし印象は静かなのだ。むしろ深いといってもいいかも知れない。どしんとしている。しんしんとして、胸に迫ってくる。

 曲は、タイやパキスタンにまつわるもの。いい歌だった。J-200の歌もあった。この歌のために、雨の多い季節柄鳴りの悪くなったのも省みず、古いギブソンJ-200を持ってきたんだという。いい歌だった。どの歌も言葉が生きていて、メロディは言葉とともに寄り添って、どれもいい歌だった。

第三部

 再びYUZO BANDのステージがはじまり、フロアには立ち見も出て、いっぱいの聴衆。大盛り上がりを見せるステージ。『走れアルマジロ』では、子供のスタンディングも出て、どうだろうこの客層の広さは。いや、親につれられてきたんだろうけれど、しかしそれにしても子供も引きつける歌の魅力はすごいものだ。

 二部にも披露された新曲。第三部でも新曲が歌われた。この間の列車の事故を受けて作られた歌。センチメンタルではなく、迎合するようなそぶりもなく、しかし歌は芯から強い。誰もがなにかを思わずにおられないような歌で、いや、それはどの曲にしても変わらない。なにかを心に思わせる歌の連続なのだ。

 手を頭の上に高く挙げ、手拍子を打つ客がいる。陶酔したように踊っている客もいた。スタンディングで手拍子を打った人が、京都の客はこういうときに立たないのが好かんといっていた。私は手拍子こそは強く打ったが、確かに立ちはしなかった。私も、好かん京都人なんだろう。

 私には、日本語は音楽には向かないんではないかと思っていた時期があったのだが、そんなことは努力していないものの言い訳だ。日本語の生きてそのまま音楽になったような歌を聴いて、私は音楽の可能性の広さを思ったね。日本にはJポップしかないみたいに知った風なこといってるやつらにも、このステージを聴かせてやりたい。日本には、この世界には、まだまだいくらでも素晴らしいものはある。知らなかっただけで、素晴らしいものはいくらでもあるのだ。

 ひょんなことから出会い、誘われて、いったライブだったけれど、この縁こそは私には嬉しい。本当によいライブだった。


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公開日:2005.07.02
最終更新日:2005.07.02
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