ハードディスクに代わるものは

 コンピュータには必須であるが、おそらくもっとも壊れやすい部品で、しかも壊れるとダメージの大きなもの。それはやはりハードディスクだろう。コンピュータの仕事は演算であるとはいえ、その演算した結果であるデータが保存されるのはまずハードディスクであり、つまり失うと取り返しのつかないものが入ってるのがハードディスクであるというわけだ。さらに加えると、稼働部品の少ないコンピュータの中でおそらくもっとも動いているのがハードディスクで、最近のものはクラッシュしにくくなったとはいうものの、それでも繊細な機器であることには変わりなく、しかも自ら発熱するというのも嫌な話。正直なところ、私はハードディスクはコンピュータのアキレス腱だと思っている。

 長くコンピュータを使っている人なら、一度や二度くらいハードディスクのトラブルに見舞われたことがあるのではないかと思う。例えば私なら、Performa 550のハードディスクを経年劣化で壊し、そしてPower Macintsh 7500のハードディスクを無茶なレコーディングをしようとして壊した。後者に関してはまるっきりの自業自得であるとは思うのだが、はじめてのハードディスクトラブルである前者の時は取り乱した。慌てていろいろなソフトを動かしたせいで、被害を拡大させたんじゃないかと思っているのだが、それでも私は運のいいほうで、主要なデータはほぼ丸ごと確保することができた。失われたのはバックアップのあったデータとそしてメールの一部だ。

 ハードディスクが壊れやすいというのは、さすがに広く認知された事実であるらしく、バックアップ用のユーティリティも多数出ているし、最近ではRAIDを個人で導入している人も増えているそうで、そして時期Mac OSである10.5 Leopardにはタイムマシンという名前のバックアップ機能が搭載されるらしい。はっきりいって私は、タイムマシンのためだけにLeopardを買ってもいいなんて思っている。それくらいにハードディスクが壊れることを怖れているといってもいいかも知れない。単にバックアップが面倒くさいという理由もあるが、その面倒くさいバックアップを避けられないのは、やはりハードディスクがいつか壊れてしまうものだからだ。

 最近ソニーが発売したモバイルPC、VAIO type Uにはハードディスク非搭載モデルがあって、フラッシュメモリを16GB搭載しているのだが、ついにこういうコンピュータが出てきたかと興味をひかれている。けれど、フラッシュメモリはなんかデータが丸ごと消えたりするような事故があるんじゃないかという怖れもあって(ファミコン世代特有の心配か?)、なかなか踏み切る勇気を持てないが、しかしデジタルカメラで使っているSDカードのデータが消えたり読めなくなったりしたことは今のところ一度もないから、案外大丈夫なのかもなあ。今後、こうしたメモリがよりいっそう高速大容量になり、ハードディスクを代替するようになれば、その時こそがハードディスクの消えるときかも知れない。あるいはフラッシュメモリとは違ったデータストレージデバイスが開発されるかも知れない。確か、電子を使ってビットを記録する記憶媒体が研究されているという話を聞いたことがあるのだが、そういうのが実用化される日がくれば、確かにハードディスクを代替しそうに思えてくる。

 現実問題として、あと数年から十数年くらいはハードディスクが主流のストレージデバイスであり続けるだろうとは思うけれども、その後、私たちの子や孫の世代にはハードディスクは過去の機器になっていて、コンピュータの黎明期には不安定で壊れやすいディスクを利用した装置にデータを保存していたなどと記述されたりするのかも知れない。その時には、機器の破損でデータが失われるというような悲劇は、限りなく少なくなっているのだろうか。だとしたら、実際夢のようだと思う。そういう時代が早く来て欲しいものだと思う。


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公開日:2006.08.29
最終更新日:2006.08.29
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