iCabというのは、ドイツのiCab Companyからリリースされている、Macintosh用のWebブラウザです。小さなファイルサイズと軽快な動作が売り。2001年11月16日現在における最新版、Preview 2.6のファイルサイズは、たった3.8MB、使用メモリも2500KBと非常にコンパクト! これだけでも、どんどん巨大化するブラウザ群の中で異彩を放っているといえるでしょう。ですが、iCabの売りはそれだけではありません。この軽さ、小ささでありながら、他のブラウザにはない気の利いて便利な機能が、多数搭載されているのです。
WWWに氾濫する広告バナーやポップアップバナー。これらを表示しないようにするフィルタ機能は、遅い回線でブラウズしている人ばかりではなく、これらのわずらわしさに辟易している人にもお勧めの機能といえるでしょう。フィルタはなんでもかんでも非表示にするわけではなく、特定のサイズやURLの画像だけをフィルタすることが出来るもので、その設定もコンテクストメニューから呼びだすだけと非常に簡単です。
JavaScript(iCabではECMAScriptと呼ばれている)に対しても、同様に細かな設定が可能。さらには、知らぬ間に送り込まれてくるクッキーを監視、フィルタすることも出来、自分の望むもの望まないものを適宜振り分けられるのです。
クッキーを用いてのユーザ追跡や、JavaScriptを使っての勝手なブラウザ操作など、されて面白くないことをシャットダウンできるのは、自分で自分のみを守らなければならないWWWでは、これからもより重要になっていくことでしょう。
ダウンロードマネージャは、Macintosh版IEを使ったことのある人ならご存じのものかと思いますが、ダウンロードするファイルをいったんリストアップした後、順にダウンロードしてくれるものです。ただ、iCabのは機能がちょっとすごい。指定したパスやサーバのファイルを、根こそぎダウンロードできるようなオプションがあって驚き。ちょっとしたダウンローダとしても使える、すぐれものです(使ったことないんだけど)。根こそぎダウンロードの際には、拡張子を指定してダウンロードするファイル、しないファイルを選択可能。こりゃ、どこかで一度使ってみないといけないですね。
ダウンロードマネージャがファイル根こそぎなら、リンクマネージャはリンク根こそぎ機能です。そのページに設置されているアンカーをリストアップして、フレームの左側に一覧表示してくれます。もちろん、一覧表示されたアンカーをクリックすれば、フレーム右側にリンク先を表示してくれます。リンク集なんかでリンク先を一覧したいときなんかには、非常に役立ってくれるでしょう。
Webブラウズをしていて意外とわからないのが、アンカーをクリックしたときに、そのままリンク先にジャンプするのか、新しいウインドウが開かれるのかということ。iCabでは、マウスポインタの形状を変化させることでポイントしている対象の情報を教えてくれるので、ウインドウが開くかどうかも一目瞭然です。
リンクが新規ウインドウを開かないならポインタに変化はありませんが、ウインドウが開くものをポイントしたときは、書類が二枚くっついたポインタに変化します。些細なことのようですが、ソフトの挙動が事前にわかるかどうかというのは、結構重要なことです。
同様に、title属性を持つ要素をポイントしたときには、エクスクラメーションマークが現れるなど、情報を余すことなく利用できるような工夫が凝らされているのが非常に好ましいです。
コンテクストメニューから外観というものを選ぶと、そのページ中の見出し(hn要素)を一覧に表示してくれます。しかもこれがただの一覧ではなくて、選択した見出しにジャンプしてくれるので、ページの目次として利用することが出来るのです。
サイトによっては、ページの最上部に各見出しにジャンプできるようなリンクメニューを用意してくれているところもありますが、iCabだといちいちページ最上部に戻らなくても目次を利用できるので、便利この上ないです。
さらに、ページに用意されたアンカーをすべて抜き出してくれる、すべてのリンクというものもあって、リンクマネージャを使うまでもないようなときに役立ってくれます。
iCabはlink要素に対応する、数少ないブラウザのひとつです。グラフィカルブラウザでは、link要素に対応しているのはiCabとMozillaくらいではないでしょうか。
link要素というのはなにかと申しますと、今表示しているページと別のページを関連づけることの出来る要素なのです。このページから見て目次のページ、前のページ、後ろのページというように、別の文書へのリンクを提供できます。
iCabはこのlink要素を解釈して、ウインドウ上部のナビゲーションツールバーの下に一覧表示してくれます。link要素が用意されているページでは、なにが目次でなにが次のページとなるかが非常にわかりやすくなるので、実に重宝します。実際の話、link要素が用意されているサイトもなかなかないのですけど。
そして、重要なのがエラーリポートです。iCabはウインドウ隅に顔がついていて、それが泣いたり笑ったりするのです。なんで泣くのか、といいますと、そのページのHTMLに誤りがあったときに泣き顔を表示することで、エラーを教えてくれているのです。
そのエラーリポートは決して厳格なものではありませんが、最低限度の誤りを指摘してくれるので、非常に助かります。タグの表記間違いもネストされたタグも、一目瞭然に指摘してくれるので、自分では気付かなかった誤りに気づくことが出来て非常に勉強になるのです。
とはいえ、普通にWebブラウズしていると、iCabが笑うことなんてまずないのですけど。
はじめてiCabを知ったのは、毎月送られてくるLink Club Newsletterのソフトウェアアップデート情報のページででした。ドイツ製の軽量ブラウザという文言の、特にドイツ製というところにひかれたのだと思います。ですが、その時はわざわざダウンロードすることもなく、覚えておくだけに止まりました。
ダウンロードしなかったのは、当時はまだLC630をメインに使っていたために、68K Macintoshではきっと動かないだろうと思い込んでいたからだと思います。ですが、それが思い違いでした。iCabは68K Macintoshでも動作します。それを利用していなかったというのは、少々残念な話です。
iCabを使うようになったのは、iBookを買ったから、ではありません。残念ながら、最新ブラウザが動く環境になれば、軽いブラウザを使うこともないと思われたのです。ですが、それを使うように仕向けたのは、友人からのメールでした。
あと、余談なのですが iCab というソフトをご存知ですか? IE でも NC でもない、Macintosh 専用のブラウザです。最大の特徴は「軽量」であることです。この点でお眼鏡にかなうのではと思い一報させて頂きました。バナー広告など読み込ませたくない画像を予め指定しておいてフィルタリングすることもできます。操作や画面はどちらかといえば IE ライクです。私は現在移行中です。詳細は以下の URL を参考にしてください。
このメールに対し、知るだけは知っているけれど使ったことはないのですと答え、でもあまりに好いような感じが伝わってきたので、自分でもダウンロードして使ってみることにしました。2000年10月、バージョンはまだPreview 2.2。これが、僕とiCabとの本当の出会いでした。
iCabとの出会いは、まさにカルチャーショックといってもいいものでした。まず僕を打ちのめしたのは、例のエラーリポート。当時のこととねは全ページが泣き顔で、箸にも棒にもかからないようなHTMLが蔓延していたのでした。はじめはこれをなんとかしたいと思い、ちまちまとネストしたタグを除いたりしていましたが、根本的な解決にはなりませんでした。なぜか? 一番最初に表示される「警告 (1/1): <!DOCTYPE> がありません。」の意味するところがわからなかったからです。
それでいったんは投げたのでした。表示されればそれでいいという考えでした。でも、負けた感じがつきまとったのは事実。自分のサイトをiCabで見れば常に泣き顔が見える。なんとかして、これを笑わせたいと思ったのでした。
iCabに出会う前の僕は、HTMLを自分で書いたことがありませんでした。グラフィカルなHTMLエディタを使って、メニューに現れている要素の意味するところを理解しないまま、それこそ完璧に適当に作っていたのでした。そんな姿勢で取り組んでいたのですから、iCabの指摘する「<!DOCTYPE>」の意味がわからないのも当然です。まずは、この疑問を解決するために、DOCTYPEをキーワードにして検索してみたのです。
すれば、たくさんの解説サイトが出てきました。HTMLドキュメントの一番最初に付けられるHTMLのバージョンを決めるのが、この文書型宣言というものらしいです。でも、三種類ある宣言のどれを選らべばいいのかわかりませんでした。仕方がないので、一番緩やかそうなものを選んでおきました。
文書型宣言をつけると、確かに<!DOCTYPE>がないというエラーは出なくなりました。ですが、それでも多数のエラーが指摘されます。どうやら、使ってはいけない要素があるようなのです。
使ってはいけない要素、あるいは好ましくない要素というのは、font要素のように、見た目に関する要素ということを、いろいろなサイトをめぐるうちに理解するようになりました。HTMLというのは文書の見た目をデザインするのではなくて、文書の持っている意味をレイアウトするものだというものを理解し始めたのです。
HTMLの理念がわかって、今まで意味もわからずに使っていたものの持つ意味を理解したいと思うようになってきました。ですが、市販されているHTML解説本のほとんどは、HTMLの各バージョンで使える要素や属性をきちんと解説していません。ただ表示させるだけならそれで充分なのですが、それではiCabは笑わないのです。市場にあふれている解説本には見切りをつけて、Yahoo! で検索したHTML解説サイトを読むことで勉強したのです。
少しずつ理解しながら、少しずつサイトを改良していくという、すべてはこのふたつの繰り返しでした。頭の中にあるのは、とにかくiCabを笑わせるという、そのことだけでした。笑わせられなかったときは、負けだとさえ思っていたのです。
iCabに指摘されるままに、不適当な要素、属性を排除していった結果、こととねはついにiCabに微笑まれるサイトに生まれ変わったのでした。これで完璧だと思い、安心したのも束の間。まだ、改良の余地があることを教えてくれたのがAnother HTML-lintでした。
Another HTML-lintは、iCab以上に厳格なサイトチェックをしてくれます。これを見れば、完璧だと思っていた自分のサイトにもまだまだ至らないところがあるということが明らかでした。
今度の敵は、Another HTML-lintになったのです。
ですが、以前はじめてiCabにエラーを突きつけられたときとは違い、今はもう指摘されているその意味がわかるようになっていました。となれば改良はそれほど難しいことではありません。
こうして、徐々にこととねは切り詰められ、ストイックなサイトに変わっていったのでした。別の言い方をすれば、地味なサイトになったともいえますね。
iCabとの出会いが、僕をHTMLに厳格な人間に変えました。ですが、Another HTML-lintも指摘するように、きちんとしたHTMLが書けるというのは、ただの出発点に過ぎないということも知るようになっていました。
正しいだけのHTMLを書くのは、それほど難しいことではありません。大事なこととは、より閲覧しやすい環境を提供することなのです。
閲覧しやすさを考えて、書籍で紹介されていたパン屑リストをつけてみました。パン屑リストというのは、このページの一番上にもある、トップページから皆さんがご覧になっているページへの道筋を表示したリンクリストのことです。これをつけることで、そのページが一体どこに分類されるものなのかがわかりやすくなりました。
link要素もつけてみました。すべてのページに、トップページとそれぞれの目次ページ、そして前後関係のあるページには、前後へのリンクを作成しました。二大ブラウザではわからないのが実に惜しいのですが……
効果的に、見出しをつけるように心がけるようになりました。だらだらと文章を書くのではなく、適切なところに見出しを入れるようになったのです。これが入ることで文章は読みやすくなりますし、iCabのページ外観も利用しやすくなります。それに、見出しを意識するだけで、少しはましに作文できるようになってきたと思っています。
全ページをHTML4.01 Strictに書き換えました。出来るだけ無駄を廃したいと思うようになったのです。でも、これは自己満足が入ってますね。
そして、全ページに公開日や最終更新日、管理者宛のメールアドレスを記述することにしました。最低限、文書の書かれた時期をわかるようにしなければならないと思ったのです。これらは、各ページの最後に記されています。
これ以降も、改良できる余地があれば、それが面倒なことであっても取り組みたいと思っています。すべては、自分の公開する情報を、ストレスなく読んでもらいたいという気持ちからであり、こう思わせるに至ったのは間違いなくiCabという優れたソフトウェアでした。
iCabはCSSに未対応であるなど、進化の余地を残したソフトです。色合いがださいとか、気になる点もいくつかありますが、それらもユーザーサイドでカスタマイズできる余地があるので、カスタマイズ好きにはたまらないでしょう。なにより、WWWで提供される情報を有意義に活用できるというその有能さが素晴らしい。
今のこととねは、iCabなくして存在しなかったと言い切れるほどに、iCabの存在感は大きいのです。