Macintoshに謝られた話

 夜のんびりしていると、Macintoshが固まってしまったのでリセットの方法を教えて欲しいと、同居人がやってきた。OSのバージョンは7.5.5。非常に安定したマシンでめったにこけることはないのだが、まあたまにはこういうこともある。command、control、power on同時押しでリセットをかけると、サッドマックが出てしまった。とはいえ、なにも慌てることはない。内蔵ハードディスクの規格がSCSIからIDEに替わった直後の機体だからなのかあるいは別の理由でもあるのか、リセットをかけた後のLC630は、サッドマックを表示してしまうことがある。別にハードに欠損が出たとかではないので、何度かリスタートをかければ直に起動してくれる。ハッピーマックが表示されて、その場を離れたところ、すぐさま呼び戻されてしまった。

 なにか珍しいダイアログが出たのだという。なんと、Macintoshが謝っているというのだ。現場に駆けつけてみると確かに謝っている。「ごめんなさい。ことえりの内部エラーが発生しました」。それはいいのだが、そのエラーが原因で完全にフリーズしてしまっていた。再び再起動をかけてみた。

 エラーに至る状況を訊いてみると、取り立てておかしなことはなかったという。いつもと同様に作業した後、システム終了をしたら、その途中で固まったのだそうだ。先ほどの「ごめんなさい」は、不適切な終了に対する警告ダイアログの直後に出たのだという。そして、今再起動したマシンも、同様にして固まってしまった。

 目の前が真っ暗になった、というのは言い過ぎだろうか。今日はすでにWindowsのリカバリをこなしている。早く対処しなければならないという切迫感に加え、リカバリしたところで失うものの方が多いという徒労感にさらされ続けた一日。精神的にかなり参っている。ここで自宅のマシンまでデータロストかと思うと、倒れそうにさえ思ったのだった。

 しかしフリーズの原因は特定できているようなものだ。ダイアログはことえりの内部エラーと告げている。となれば、ことえり関連のなにかが破損している可能性が高いだろう。実際、起動時にshiftキーを押しながら機能拡張の読み込みをキャンセルしてやると、何事もなく立ち上がった(日本語は表示されないけどね)。最悪、システムの再インストールで対処できるだろうと判断をつけた。

 さっそくシステムCDを引っ張り出してくる。漢字トーク7.5.1 CD-ROMを挿入し、再起動をかける。この際にはcommand、option、shift、deleteを同時押ししておく。でないとハードディスクから起動してしまうからだ。CD-ROMからの起動を終え、Disk First Aidでディスクのチェックをすると、損傷があるという。さっそく修復して再起動しても、やはり固まってしまう。まあ、この時点で立ち上がるとは思ってなかったけどさ。それでも、かなり気落ちするんだ。

 再びCDから起動。Disinfectant(アンチウィルスソフト、優れ物)でスキャンしてみると壊れたファイルがいくつか見つかった。それを処分してみるもやはり立ち上がらない。何度目かの気落ち、打ちひしがれるなあ。

 ここでようやっと本腰を入れる。初期設定フォルダを確保してみることにする。なにしろシステムを再インストールすると今までの設定がすべて失われてしまう。それは正直いって辛いので、初期設定フォルダをコピーしておいて、セットアップしなおしたシステムの初期設定と置き換えてしまうのだ。また、再インストールする前にできることはまだある。壊れたファイルの検出をするのだ。

 新しいソフトや機能拡張書類をインストールした直後にマシンが立ち上がらなくなったときは、コンフリクトを疑うのが基本だろう。しかし、何もしていないのに突然立ち上がらなくなった場合は、なにか書類が壊れてしまった可能性が非常に大きい。ならば、その壊れた書類だけ正常なものと置き換えてやればすぐさま復旧するというわけだ。

 壊れた書類の検出の方法は簡単だ。例えば機能拡張書類の場合なら、インストールしてある機能拡張書類の半分を機能拡張フォルダから外してやって再起動する。それで立ち上がらなければその機能拡張群に、立ち上がれば外したもののなかに犯人がいるということになる。犯人がいると思しきグループをさらに半分にわけていくことによって徐々に絞り込んでいってやれば、いずれ犯人もわかるという算段だ。

 とはいえいきなり機能拡張ファイルをどうこうするのも骨なので、先に初期設定ファイルを疑ってみる。すべての初期設定ファイルを外した結果立ち上がるのなら、初期設定に犯人がいるということになる。ところが、その初期設定フォルダの移動が出来なかった。なぜだ!? これが、起動中のシステムの初期設定というなら話もわかる。しかし、今このシステムは稼働していない。フォルダが動かせないなどということがあるだろうか?

 事件は急展開を見せた。ならばと思いコピーだけでもしようとした初期設定フォルダがディスクエラーを引き起こした。このエラーの直前に随分と長い間立ち往生していた書類があった。「個人情報ファイル」。みればことえりの設定ファイルだった。

 謎はすべて解けた! 個人情報ファイルを引っつかみゴミ箱へ移す。すぐさま再起動をかけると、なにごともなかったようにMacintoshが立ち上がった。

 一時はシステムの再構築も考え憂鬱さを満喫したものの、簡単な方法で復旧にこぎつけることが出来て、ほっと一安心。こうなれば、Macintoshに謝ってもらえたことで、なにやら得した気分にさえなるから現金なものだ。ただ、一応は反省しておこう。こういうシステム関係のトラブルはいつ発生するかわからない。いざというときに慌てないためにも、日頃システムのバックアップもしておきたいものだと思ったりしたのだった。


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公開日:2001.07.20
最終更新日:2001.09.02
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