電話用のモジュラーケーブルによる家庭内ネットワークが頓挫し、あまっていた10mのモジュラーケーブル。これはただ使われないままに放置されたわけではなかった。家庭内ネットワークには使われなかったものの、おそらく本来の使用法に近いかたち、モジュラーコンセントとモデムをつなぐ用途に使われることとなったのだ。
インターネットがまだ研究者などの限られた人たちにのみ使われていた時代。現在のようなインターネットサービスプロバイダなどはなく、それゆえ僕が入ったネットワークは商用パソコン通信の老舗である、NIFTY-SERVEだった。
パソコン通信といっても最近の人はピンと来ないかも知れない。様々なテーマ別に開設されたフォーラムがあり、フォーラムのなかにはまた細かなテーマに分かれた電子会議室がある。BBSや掲示板といわれるものなのだが、インターネット上のものと大きく違うことは、基本的にキャラクターベース、テキストでのやり取りが中心であることだろう。
なにしろやり取りするのは文字情報だけなので、画像に彩られたWebページなどに比べてもはるかにデータは軽く、しかもメールや会議室の発言を一括してダウンロードしてきて、オフラインで読むためのツールなども充実していて、便利なことこの上なく、今も僕はNIFTY-SERVE、@Niftyを愛用している。
NIFTYを選んだのにはわけがあって、当時講読していたMacintosh専門誌、MACLIFEのフォーラムがNIFTYにはあって、かつNIFTYを利用するのに必要で便利なツールが、フリーウェアで存在していたことが大きかった。
必要だったソフトとは、NIFTYを自動巡回しメールや会議室のログ、果てはオンラインウェアまで、自動でダウンロードしてきてくれる通信ソフト「ComNifty」。ComNiftyでダウンロードしてきた、そのままでは読むのに適さないログを会議室ごとに分割してくれる「魔法のナイフ」と、そのテンプレートである「NIFTY-J ぞーさん」。最後に、切り分けられたログを閲覧しするログブラウザ「茄子R」。
とくに、ComNifty、魔法のナイフ、茄子RはNIFTY-SERVE三種の神器と呼ばれ、今も多くの人に重宝されている大ヒットソフトである。
ソフトはMACLIFEの付録CD-ROMから入手し、設定方法もMACLIFEの記事で学んだ。とにかく意味もなにもわからないままに設定し、ネットの海に漕ぎだした。
はじめて入ったのは、最初からの予定どおりMACLIFEフォーラムだった。MACLIFE誌の巻末には、最近のフォーラムでの話題というのがピックアップして取り上げられており、憧れの場だった。
はじめての発言は雑談の会議室での自己紹介だった。忘れもしない、発言番号22221だった。自分の発言番号に気付いた僕は、慌てて二つ目の発言をし、22222というぞろ目の発言番号をものにすることが出来、ちょっといちびったネットデビューを果たしたのだった。
これが四年前の話。なんだか、もっともっと昔の話のような気がしてならない。