Emacs練習中

 私は、一般の例に漏れず職場ではWindowsを使っています。はじめて使ったのがWindows 98で、次の職場ではWindows 95に戻り、そして今はWindows 2000を使っています。まあOSが違ってもやることは対して変わらないので、そこそこ使えているというわけですね。

 私の使うWindowsソフトはAccessとExcelくらいなもんで、Wordはまず使いません。じゃあ文書作成はどうしてるのかといいますと、テキストエディタですね。全部HTMLとCSSで作成して、それで充分です。変な挙動とかないし、軽いし、充分見栄えも配慮できるし、最近はWebブラウザの入ってない端末というのもほとんどないから、環境を選ばず見ることができる。いいことづくめですよ。

 そんなわけで、普段使うエディタは結構選んでいました。シンプルで使いやすいということを重視して選んでいます。その結果がMacintoshならmiでして、WindowsならMKEditorだったのでした。

必要充分な機能

 MKEditorの美点は、文書作成に必要な機能が充分備わっていて、それでいて軽いことでしょう。なんといいますか、一昔前の家電なんかはそうだったと思うんですが、高機能を多機能と勘違いしているようなのは困り者です。ごちゃごちゃと、本当に必要かどうかわからんような機能が山と詰め込まれていて、逆に使いにくくなっている。操作もわかりにくいし、というわけで、私なんかはもうシンプルで必要な部分がしぼられているほうがいいと思うんですね。カメラならちゃんと撮れる。プレーヤーならちゃんと聴ける。エディタなら、ちゃんと編集できる機能があればそれで充分。MKEditorは、まさに私の要望を満たすエディタだったのです。

カーソル操作への要望

 しかし、以前みたいに使う時間が短かったときはよかったのですが、使っているうちにちょっと要望が出てきたんですね。要望といっても根本的な部分に属するもので、Windowsソフトである以上それを満たすことは難しいであろうという要望です。それはなにかといいますと、キーバインドを用いたカーソル操作でした。

miはできる

 miは、キーバインドを用いたカーソル操作が可能なんですね。Controlキーとの組み合わせで、いわゆるダイヤモンドカーソルだとかを実現できます。また自分の好きな組み合わせに設定しなおすこともできて、自分の手に馴染むように調整していくことができるんですね。これはいいですよ。すごくありがたいです。

 ちなみに、このキーバインドによるカーソル移動は、以前愛用していたエディタ、システムソフトエディタでも可能でした。でもそのカスタマイズの便利はmiに軍配が上がります。

 Controlキーを使ったカーソル操作に慣れると、これが本当に便利なんですね。カーソルキーとかデリート、場合によってはエンターキーも含めていいと思いますが、これらは意外に遠くて使いづらいものです。ところがControlキーを併用すると、カーソルはS,D,E,Xとか、デリートはD、バックスペースはH、エンターならMなど、ホームポジションを離れることなくこれらを使えるようになるんですね。

 この、ホームポジションを離れないというのが重要でして、意外に大きく操作性に影響することなのですよ。なので、これができないエディタでは、ちょっと不便に感じたのでした。

エディタの乗り換え

 そんなわけでエディタを乗り換えることにしました。なににしようか、といっても、多分WindowsでControlキーを用いたカーソル移動をサポートするエディタはないでしょう。というのも、WindowsのControlキーはMacintoshでのCommandキーに相当し、コピーやペーストといった基本機能に一部のキーが割り当てられてるのですから、カーソル移動に割り当てる余地はもうないのです。

 そんなわけで、私はUNIX系OSで広く利用されているEmacsのWindows向け実装であるMeadowを使ってみることにしました。

Emacs/Meadowのキーバインド

 しかし、Emacsのキーバインドもまた特徴的です。なんといっても、カーソルキーを動かすのが、F,B,P,Nですからね。それぞれ前進(Forward)、後退(Backward)、前(Previous)、次(Next)の頭文字で、うわあ、すごく覚えにくいし直感的ではない。でもやってるうちに慣れるんですね。

 これらの、ちょっとわかりにくいキーバインドになぜ慣れようとしたかといいますと、Mac OS Xに用意されているココア系アプリケーションは、テキスト編集でこれらキーバインドをサポートするんですね。テキストエディットがそうです、Mailもそうです、Safariもそうです、そしてCocoMonarもそうです。Mac OSではOptionキーを特殊欧文文字に使ったりもしますから、すべてのキーバインドが使えるわけではないんですけど、基本的なものは使えるんですね。なにしろ、Control-Kでカーソル位置から後ろを消し去って、その消したのをControl-Yで貼り付け(ヤンク)たりも可能ですからね。ヤンクのサポートには本当にびっくりしました。けど、行単位での移動をやりたいときなんかには、すごく便利な機能です。ちょっと感動しましたね。

 とまあ、こんなわけで現在はMeadowを使ってEmacsの操作に習熟しようとがんばっているわけです。C-x C-cで終了とか、とにかく独特のキーバインドは多いのですが、慣れればこういったのもたいした労ではありません。むしろ、キーボードでカーソル操作ができないほうがストレス。なので、Meadowに切り替えてからは楽しく仕事ができてい(るような気がし)ます。

Emacsを利用するメリット

 Emacsを利用するメリットはまだほかにもあります。それは、Emacsの対応するプラットフォームの幅広さです。

 上に上げたのがEmacsのサポートするプラットフォームで、WindowsやMacintoshはもちろん、UNIX系OSやLinuxももちろんリストされています。そのため、もし明日からUNIX/Linuxを使用するとなっても、Emacsを使えるから大丈夫。複数のプラットフォームを渡り歩く私みたいな人間には、そのどれででも同一の操作環境を整備することができるということになりますから、すごくありがたい話です。

 現在はmiに不満を感じることはないため、Macintoshでのエディタは置き換わりそうにありませんが、もし将来miにできずEmacsにできるような機能を欲しくなった場合には、逆転する可能性が出てきます。いずれ、そうした選択肢はたくさんあったほうがいいわけで、こうした先にプラットフォームを意識しないコンピューティングがあるのだとしたら、実に理想的でありますね。


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公開日:2004.12.15
最終更新日:2004.12.18
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