(盛大にネタばれをしています 未クリアの人は注意して下さい)
念願の三百撃墜を達成し、熊本の幻獣もほぼ壊滅した今、やりたいことは一杯あるんだ。今度の日曜には芝村とボーリング(アルファのWebサイトでは、ボウリングと書くべきだと言ってたっけ)に行く予定だし、クラス交流会も募金、炊き出しもやってみたい。
今までが、戦闘とその準備にばかりに明け暮れた日々だったので、もうそろそろそれから開放されてもいいんじゃないだろうかね、と思ったりする。
ウォードレスが一着廃棄されたという。けれどもういいや。いくらでも廃棄してくれ、といった気分。なんといっても、三百撃墜の絢爛舞踏章を手に入れて人の領域を越えたのなんだと言われる今、ウォードレスの一着くらいすぐ陳情して、高性能なものを手に入れられそうなものでしょう。
正確な撃墜数は、速水が301、芝村が294。この数体の差は、熊本城防衛最終戦での、ウォードレスで戦った際に生じたものだ。でも、これでよかったのだと思う。というのも、絢爛舞踏章をとって、みんなが今まで以上により距離をとりはじめたからだ。世界で五人しかいない絢爛舞踏だからではなくて、絢爛舞踏という存在がすでに人外のものなのだろう。
こんな疎外された思いをするのは、自分一人でたくさんだ。
けれどそんな思いはすぐに終わった。東原に誘われて、壬生屋を加えた三人での昼食の後、校舎前階段で狩谷に出会って、すべては新しい局面に進んだ。
突然現れる竜に立ち向かわざるを得ない状況の中で、決定打に欠ける士魂号複座型突撃仕様は、敵レーザーを煙幕弾頭で無効化しながら、二度のミサイル攻撃に成功。しかし、やつのレーザーには煙幕弾頭では力不足のようだ。しっかりと当たってくれ、数百ものダメージを受けてしまう。
銃撃で立ち向かおうにも、射撃の待ち時間がもどかしく、どうしても敵の攻撃をくらってしまうため、一発も当てないうちからジャイアントアサルトを捨て去り、キックで迎え撃つことをした。
校舎を利用して、敵の攻撃を射線妨害でかわしながら、近寄ってきた敵を蹴る、蹴る、蹴る。
善戦空しく、被弾。機体の耐久力が一桁にまで落ちた。実にやばい状況下で、速水の歌うガンパレード・マーチに仲間達が次々と加わり、激励が飛んでくる。そして、精霊手がもたらされブータの応援もあって、一か八かの賭けに出ることとした。
残り気力が少ない。敵が建物の影から出るころを予測し、精霊手を放つまでの準備をする。そう何度も撃てないだろうので、一撃で仕留めるため狙いをつけ、敵が目前に現れるのをじりじりと待つ。
そしてやつは現れてくれたのだった。放たれる精霊手。攻撃は敵にあたり、息の根を止めることに成功して、速水が一瞬の躊躇を見せたうちに、本当に息の根を止められてしまった。
戦いは終わり、自然休戦期に入って、再びの戦争に参加していく5121小隊。戦争が終わって、みなの消息を聞きほっとするもの、陰鬱な気にさせられる末路、そしてもうあいつがいないということ、いったい僕の守りたかったものはなんだったんだろうか。こんな結果を望んでいたんじゃなかった。こんな終わりを欲しかったわけじゃないんだ。
出来ることなら、あの一日をやり直して、あの不幸な出来事を止めたいと思った。なんとしても、皆を仕合せに導きたいと、思ったんだ。
そして再び繰り返されるあの日――
今度は以前のような失敗をしない、とすべての戦友たちに話をして、悔いを残さない状態で竜に立ち向かいたいと思った。今日は雨、陰惨な出来事を待つにはちょうどいい天気かも知れない。
教室にいた加藤、瀬戸口、善行を皮切りに、本田、茜、岩田、中村、田代、そしてブータと話した。
ブータが言うには、明日の夜明けを待てという。今日はこの状態を得、決戦は明日にまわせということだろうか。
坂上と話し、東原からは意外なことを聞かされる。そうか、彼女こそが希望であり未来であったのかと思い、芝村、来須と仲間探しは続く。来須から精霊手を教わり、若宮、石津、遠坂と話す。遠坂からは決定的な情報を得、同志滝川、新井木、原、壬生屋と続いた。
最初の親友である滝川には、これまでの礼も含め、なにかプレゼントをと思い、焼きそばパンを贈る。というか、なんでこんなものしか贈れないんだろう。
森、ヨーコ、田辺、そして芳野先生と話し、少しでも戦いを有利に運べるように、夜明けまで運動力の訓練を行って、夜が明け四月三十日。雨はもう止んでいた。
月末の結果に疑問を残すテストを終え、芝村と最後の昼食に、味のれんへと赴いた。すべては着々と進む中、捜すは彼だけとなった。
彼は、ハンガーにいた。いつにない雰囲気、数度話しかける中で彼がその目的と、本性をあらわにしてきた。
戦闘が始まった。倒すための戦いではなく許すための戦いが。
もう精霊手を得ているため、これをメインに戦っていくこととする。煙幕弾頭を発射し、敵のレーザーを無力化してからグラウンドに出る。敵がグラウンドに出ることを予測し、狙いをつけるから精霊手までを一気に叩き込む。
ヒット。しかし決定打にはならない。それどころか、煙幕を無視し敵のレーザーが三号機を襲った。膨大なダメージを受け、性能低下とともに故障のランプが点りはじめる。
精霊手を放ちながら後退戦を強いられる速水。次第に追い詰められていく。そのうちに思いついたことがあった。精霊手のコマンドワード、GHANDはそのまま防御につながる。防御をかけていれば、敵の攻撃も防げるはずだと、精霊手から防御のコンボを連続させる。
しかしその思惑も通じず、敵の攻撃は無情にも速水機を破壊し、もう駄目かと思ったその時、東原の声が聞こえた。
ここで負けているわけにはいかない、仲間が背後にいることに思い至り、死力を振り絞り立つ速水。最後の精霊手を当てそこね、ジャンプで校舎裏に退避した。
残る敵の体力は二千。こちらは三十にも満たない状態。まともにやり合ったら負ける。
敵との間に遮蔽物をはさみ、射線妨害が生じていることをいいことに、今日はじめてのミサイルを発射した。しかし、千にも満たない打撃しか与えられず、敵は校舎を迂回しこちらへ向かってくる。
こうなったら、蹴りしかない。
敵の方向に向き直り、蹴りを準備する。自然と発生するすり足で、敵の攻撃範囲から逃れつつ蹴る。怪しげなドットレベルでの移動を行いながら、敵の射線をことごとく避け、蹴り倒すことに成功した。
そして、5121小隊は、ただひとりの犠牲も出さず、この戦争を乗り切ったのだった。
当初に立てた目標、
は、当初の予測を越え、最良の結果を得ることが出来た。
だれ一人死ななかったばかりか戦争を最も理想的なかたちで終えることに成功し、芝村舞との恋人関係も、幾度か危機はあったものの、解消することなく終えることが出来た。
友達たくさんも、少なくとも男性女性関わらず、友情値を最高レベルまで持っていくことは成功していたはず。争奪戦発生を恐れたため女性に対しては無関心を維持し続け終えたものも多かったが、少なくとも男性とは、全員と親友以上の関係になれていたはずだ。
当初の目標を達成し終えて、けれどまだやりたいことはたくさん残っている。
それはクラス交流会。舞とのボウリング。炊き出しなどの奉仕活動。まだまだやりたいことはあったんだけど、それは先の楽しみにとっておこう。
だって、まだすべてが終わったわけでなし、楽しみはまだまだ続くんだから。