【タイトル】 カルドセプト エキスパンション
【発売元】 メディアファクトリー
【ジャンル】 TBL
【価格】 1999.5.1発売 \5,800
【ハード】 プレイステーション
環状のマップを回り、土地を獲得、総資産――魔力が既定値に達したものこそが勝者。プレイヤー(セプター)はカードを手に、一癖も二癖もあるライバルたちとの攻防が熱い。
カルドセプトはモノポリータイプのボードゲームに、カードバトルの要素を加えた、秀逸なバランスが光るゲームです。ダイス目という運が支配するボードゲームの展開を、手にしたカードで自分の手元に引き込み支配する。まさにカードの運用と戦略が、勝敗を分けるのです。
戦いに持って出られるカードは1ブック――五十枚だけ。ブック構築の段階から戦いは始まっています。想定される展開に対応するカードをすべて含めることは不可能。よって、戦略がカードを選ばせ、結果ゲームの展開を支配します。
戦略の優劣が勝者を決めるのならば、勝利の決め手は戦略を支配する発想にほかなりません。カルドセプトとは、プレイヤーが自分の意志と発想を武器に戦う、人間中心のゲームなのです。
以上400文字でした。
以下、無責任な感想をいくつか。
最近のゲームは、プレイヤーの出来ることが少なく、ゲーム主体としかいえないようなものもあったりして、不満に思うこともありますが、カルドセプトに関してはそんな心配、不満は皆無です。
対コンピュータ戦でこそワンパターンな展開も生じますが、対人戦ともなると、そこはもうセプターの意志と発想の勝負となります。それだけに勝てばうれしい、負ければくやしい。そういう人間の意識、感情を、発想、意志をふりしぼったところから揺り動かしていくのですから、面白くないわけがありません。
ワンパターンになりかねない対コンピュータ戦も、対人戦を主眼に置くと、ブックの実験場と化し、素晴らしいフィールドとなります。
まさに人間中心のゲーム、それがカルドセプトです。
カードは全部で三百六十一種類。そのイラストが実にかっこいい。カードイラストと、勝利時などに得られる一枚絵、それらがこのゲームの世界観を、雄弁に語っています。
レビュー本文で、戦略こそがカードを選ぶなんていってるけど、絵で選んじゃってるカードもあったりします。ねえ。
音楽は、中世風味付けあり、フランス近代っぽい響きもあったり、と実に幅広く素敵です。あまりに素敵だったので、わざわざ頼んでまでサントラを買ってしまいました。
音楽の使い方がうまいのは、総魔力が既定値に近づき、勝負が後半にさしかかると、突如音楽が変わるのです。否応無しに高まる緊迫感。トップのものは追われるものとしての、下位のものは追うものとしての焦りが、ちりちりとプレイヤーの心を焼きます。
あまり気にしたことのない人は、一度注目(注耳?)してください。
壊れかけてる女の子や、いうこととやることが支離滅裂なラスボスなど、一癖二癖ではすまないコンピュータキャラの個性がいい感じです。
キャラクターごとに、実にそのキャラクターらしい戦略が用意されていて、その戦略を逆手にとって楽勝ペースに持ち込むのも、その戦略に乗って苦しい戦いを楽しむのも、どちらも楽しい。
そういう意味では、よく出来ています。しかも、彼らは本当の本気ではないんだよなあ。そこはちょっと残念かな。
カード三百六十種類を全部集めるだけでも大変、たまには疲れてお休みしたくなったりしますが、ある程度するとまたカルドセプト熱がどこからか盛り上がってくる。実に長く楽しめるゲームです。
長く楽しむ秘訣は、身近にセプターを持つこと。カルドセプトの神髄は対人戦といっても過言じゃありません。
だから、セプター不足に悩んでいるあなた。メールください。僕も悩んでます。
例えば、コンピュータはクリーチャー移動をしませんしホーリーワード系のスペルも持っていません。だから、あこぎな作戦を駆使するプレイヤーに較べ全体的に弱くなっています。
これは、最初の方はいいんだけど、カードも集め終わり自分なりの得意戦略も見つかって、純粋に戦いを楽しみたいという段になると、ちょっと不満に思えてきます。
全カードを集め終わったセプターには、コンピュータのリミット解除の選択肢があってもよかったかな、と思います。勝てなくなったりして。
このゲームは、憶えなければならないことが結構あります。別に憶えなくてもかまわないのですが、理解しているのとしていないのでは、結果に驚くほどの差が出てくるのも事実です。
初心者のころは、局地戦ばかりに意識がいってしまい、強いクリーチャー、強いアイテムを揃えがちになってしまいますが、そうなるとブックのコストが高くなりすぎて、余裕のあるカード運用が不可能になり、逆に弱くなる結果になります。
敵の土地に止まったときも、その土地の価値を判断して、通行料を払って見送るか、意地でも奪うかという判断が必要になってきます。何でもかんでも戦って奪おうとすると、10数Gの通行料を払えばすむところを、クリーチャー召喚コストとアイテムのコストで、数倍もの出費を強いられることもしばしばです。
カルドセプトの基本は、ブックのコストと効果のバランスを考えることと、自分流の戦略を早めに築くことです。はっきりいって、連鎖を組んでレベルをいくつかあげると、たいていのマップでは規定魔力値に達してしまうのです。
この辺の兼ね合いを身に付けるまでが最初の山になります。どうしても勝てない、どうしても進めないという人は、いったん自分の戦略を練り直し、土地の活用、カード運用の見直しをしてください。
そうすれば、このゲームから、この欠点はなくなります。
ちょっと難しめに思えるゲームですが、やってみると実は以外と簡単だったりします。
ボードゲームに躊躇している人、カードバトルを敬遠している人、トレーディングカードで破産しかかってる人、一度カルドセプトの世界――リュエードに飛び込んできてみてください。
損はさせません。