【タイトル】 奏(騒)楽都市OSAKA
【発売元】 KING RECORDS
【ジャンル】 AVG
【価格】 1999.3.11発売 \6,800
【ハード】 プレイステーション
独特の世界観に貫かれた、都市シリーズのゲーム版。都市シリーズをご存じないなら、一読することをお勧めする。世界観が分かったほうが断然面白みは増すし、それに本のほうがとりあえず安い。もう、めっちゃくちゃに癖があるので、合わないなら早いうちに撤退したほうがお互いにとって仕合せというものだ。
だがノリが合うなら、面白さは保証付き。マスコミ情報戦を勝ち抜き、情報塔バベルの初使用権を勝ち取るため、主人公たちは、大阪の街に繰り出しては連日奮闘する。事件を追うにつれ、隠された真実が見えてくるというのは、お約束。その真実に迫るのも、販売部数の増進を狙うのも、お気に入りのパートナーとの親交を深めるのも、また好し。学生時分の部活動を思いだす楽しさだ。
しかし、このゲームの醍醐味は、その世界観を満喫することに尽きるだろう。少々の荒さはあるが、あの世界に住みたいと思う輩は、なにを差し置いてもプレイすべし、だろう。
以上400文字でした。
以下、無責任な感想をいくつか。
意外と新聞作成が楽しかったりします。メンバーに指示を与え、新聞種を拾ってこさせる。記事を三つ集めたら、紙面構成をしてサーバに公開する。これが一連の流れ。週末に公開される新聞の販売部数でライバルと競うという寸法です。
記事の収集自体は、ある程度プレイすればこつも飲み込めて、提示される取材ポイントに対して、誰をどのように派遣すればいいかが分かってきます。後は、ライバルをどう対策するかが焦点になってくる。このあたりの駆け引きも、けっこう楽しめる要素でしょう。
事件を追うことによって明らかになる謎や真相、というのはおそらくこのゲームの売りにして胆です。もともとが文庫で展開されたシリーズで、ゲーム制作者として著者がクレジットされているとくれば、骨太のストーリーが期待できるでしょう。むしろ、ゲームとしてよりも、こちらに期待したユーザーも多かったのではないでしょうか。
お気に入りのキャラクターがいれば、楽しさもいや増すでしょう。そのキャラクターの過去や迷いやなんかを受け止めて、伴走するのは、ちょっと青春群像といった気恥ずかしさと喜びがないまぜになって、不遇な青春を送った人なんかには特にお勧めできます。
おかしいです。言詞爆弾やら遺伝詞やら格爆弾やら、妙に言葉にこだわった違和感たっぷりの世界。物語やら設定やらも、妙に言葉にこだわっています。このへんの異様な言語的遊戯世界というのが、川上稔の面白さだと思うのですが、こういうのが嫌いな人はとことん合わないでしょうね。人を選びます。
けれど、端々に出てくる現実とのずれやなんかを楽しめるなら、ぐっと面白みも出てきます。カンブリア金魚すくいとかなんとかかんとか。とりあえず読んでみて、プレイしてみて、合うと思ったら続行、合わないと思ったら撤退。つべこべいわずに没頭して、疾走するのが楽しみ方の基本かと。
作者が、ゲームは一度遊んだらセカンドプレイをしないんだそうで、そのせいでこのゲームは一度遊ぶだけでもう充分お腹一杯になるように作られています。プレイ時間はかなり長く、もう終わると思ったら延長、延長、というのりで少々疲れ果てます。
楽しいことは楽しいんだけど、終盤になると資金のやりくりも大変になってきて、一からやり直すくらいなら突き進むほうがましなわけで、このあたり、なにも考えずに前進するくらいの猪突猛進ぶりが必要なのではないかと。考え考えプレイしていると、いつまでたっても終わりません。
イベント総数はめちゃくちゃ多く、千を越えているとかいう話で、プレイステーション用ソフト中でもおそらくトップクラスの数なのだそうです(というか、ぶっちぎり?)。なので、全部見ようだなんて考えるのは無謀です。作者自ら、100%は無理ではないかといっていたりして、それでも100%を達成したい人のために、複数のセーブデータから、クリアイベント(記事のコレクション)のマージが出来るようになっています。
ここまで割り切られると、最初から100%を目指そうだなんて思わなくなるので、逆にすがすがしい。
あるキャラクター固有のイベントなんかで、前段階のイベントをとばしているのに、後の方のイベントが発生したりすることがあります。唐突に、かなり核心に迫った話やなんかを聞かされて驚いたり戸惑ったり。それくらいならいいんだけど、それがある意味ネタばれになったときなんかには、少々げんなり。
でも、こういうあらっぽさもまたいいか。でも、本当はいかんと思う。
舞台が大阪なのでキャラクターは大阪弁をしゃべる、と思いきや、意外と大阪弁色は強くないです。一応大阪弁のテキストにはなっているんですが、やはりネイティブのそれではない。そのへんが、妙にむずがゆくて、気色悪いです。
しかし、叶綾役の久川綾は大阪出身のはずなのに、あまり大阪っぽくないんだわ。なんでだろうね。嘘大阪弁みたいに聞こえてしまうときがある。
ここは、実は大いに不満だったりするところです。
癖が強い癖が強いと言いまくっていますが、近頃のどんどんマイルドに、ファッショナブルになっていく中で、アクの強さや個性というものが薄れていくソフトもある中で、これだけの独自性を放てるのは、ある意味素晴らしい才能です。
人を選ぶ。いいではないか。これこそが出会いと相性の妙であり、これくらいの強烈な個性とそれを楽しもうというプレイヤーの気概が突っ走るような、暴走系ソフトも、世の中には絶対に必要です。
貴重な一本だといえるでしょう。
とはいいますが、どこか作った、というか無理してはしゃいだようなところも感じられます。設定やなんかはゴツくても、心底本性からゴツくはないといったふうで、少々物足りないのです。そこが、残念かなあ。