【タイトル】 終末の過ごし方
【発売元】 アボガドパワーズ
【ジャンル】 AVG
【価格】 1999.4.9発売 \7,800
【ハード】 Windows95/98
次の週末で人類が滅ぶとなれば、こんなもんだろうか。常軌を逸した事態下で人は、意外と日常をなぞるのかも知れない。そんなことを思わせる気だるい日常。一日の始まりに挿入されるラジオ番組がなければ、世界が終末に向かっているなんて思えない。一種不思議な雰囲気が漂い、それは妙なリアルさで迫ってくる。
その非日常に暮らす少年少女たちの恋愛模様を追うのがこのゲームの趣旨ではあるが、彼らの情感のほとんどは、日常に暮らすわれわれのそれと変わりない。世界は終わらなくとも、いずれ終わる少年時代を見つつ、焦りながら迷いながらの生。だがそれらが異常事態に置かれたことで、うまく浮き彫りにされている。
ただ、ゲームとしてはどうか。選択肢も少なく、筋にバリエーションはほとんどない。あらかたライトノベルズといった体で、ならこのボリュームは値段に対して明らかに不足だろう。ある特定の趣向を解するもの以外には、正直薦められない。
以上400文字でした。
以下、無責任な感想をいくつか。
おんなじではありません。おんなじではありませんが、登場人物は、一人を除いてみんな眼鏡。少なくとも女の子は全員眼鏡です。しかも、このことは宣伝に際しても強調された、いわばこのゲームの売りでもありました。
『登場人物、全員メガネ!!』
なんだかなあ。けれど、これがなければ僕はこのゲームに手を出さなかったに違いありません。
気の利いたスキップ機能が搭載されています。未読はとばさず既読だけをとばしてくれるこの機能のおかげで、複数回プレイも攻略も楽々です。なにより、文章を余さず読みたいという、僕みたいな人間には非常にありがたいスキップ機能なのです。
文章表示速度も、既読を一瞬で表示するなんてものもあって快適です。いい感じ。
世界の終末を前にして、ラジオではDJが、ともすれば絶望に浸りかねないリスナーたちに精一杯に呼びかけ、放送を続けております。この放送が一日の始まり。
演出的には、世界観を統一し、終末が本当に近いというリアリティを生み出すのに、非常な効果を発揮しています。
けれど、そういうのとは関係なしに、なんだか本当にいい雰囲気で、すごく身近に感じられる温かみがありました。正直のところ、このラジオ放送が一番好きでした。
音楽がエリック・サティ風で、しんみりとしたいい黄昏感を演出してくれます。そうじゃない音楽、シーンにあわせて緊迫感あふれるものやらいろいろ、もありますが、全体的な色調はサティ風。どこかに心を残してきた感傷を掻き立てるのです。
全体的に、ボリュームは不足気味。ゲーム内時間は一週間。プレイしてみれば、実時間一時間少々くらいでしょうか。あっという間に終わります。
まずひっかかることなく、すいすいと進めるので、攻略も楽々。半日もあれば、完全攻略も可能でしょう。
いいんかなあ。
シナリオはいい出来だと思います。あまり大仰に構えずに、手の届く部分をきちんと描いている。好感の持てるものでした。
けれど、終末を目前に自分のパートナーを選ぶことになるわけですが、その際に少々状況に酔ったようなテキストが散見されるのが残念でした。全体が、淡々とした筆致で書かれているだけ、目立ってしまうのです。
いっそのこと、すべてを淡々と、淡い色調で統一して欲しかったと思います。
これだけ眼鏡ヒロインがそろえば、眼鏡のあるなしにこだわらず、個別の好みというものを追及できるわけです。そういう意味では、心臓病の少女とちょっと人付き合いの苦手そうで斜に構えた幼なじみが、妙に気を引いてよかった。やはり、自分は世間に溶け込みにくい、アウトローが好きなようです。さらに、心臓病の少女は、ちょっと少年っぽくて、そのあたりも実によかった。多くは語りませんが。
誰もに薦められるものではありませんが、決して悪いものではありませんでした。好きならば買い、そうでないなら見送る? それくらいのスタンスでつきあうとよい感じかも知れないです。