Lの季節2

『Lの季節2』をプレイしてみた

 私にとって本格的なノベルタイプのゲームは『Lの季節』だった。さらにいえば、いわゆるギャルゲー、それも『Lの季節』が最初のものであった。しかし、『Lの季節』をプレイしている時には気付かなかったが、このゲームは一般にギャルゲーとされる枠からはかなり外れており、そうした特質が私には効いたのだろうと今となってみればわかる。

 さて、『Lの季節』のリリースされた1999年から九年が経ち、この度『Lの季節2』が発売された。私はその発売を知りつつも、半ば恐れを持って見ており、しかしそれでもプレイせねばならない、そんな気持ちになって、そして実際にプレイを開始した。

 本文書は、私が『Lの季節2』をプレイして感じたことをつづるものだ。ゆえに、ネタバレとなる要素が散見することが予想される。なので、未プレイの方、まだそこまでたどり着いていないと思われる方は、注意していただきたい。さらに加えていえば、この文書は『Lの季節』をプレイしたことのあるという人間を相手にしていると思っていただいてかまわない。『Lの季節』に関係する知識は、当然知っているべきものとして、特別な解説も、またことわりもなしにどんどん書かれることだろう。また、その知識を持って推測されることもある。その推測が当たるのか外れるのか、それはわからない。わからないが、そうした考える楽しみは、一人一人のプレイヤーが独占的に味わうべきものと考えている。だから、私の考えることがプレイヤーの楽しみを台無しにする可能性があることに注意いただきたい。

 うっかりとスクロールして読んでしまうプレイヤーもあるかも知れないから、本文は隠しておくことにした。読む際には、ニューロマンシーボタンを押して欲しい。

進捗状況

 未クリア。現在核心に迫らぬまま、幻想界ルートを中途まで進行させた。具体的には、捜査開始して最初の聞き込みが終わったところ。

すべてが星原に注がれる

 私は『Lの季節』とは、星原百合を巡る物語だったと思っている。そしてそれは、『Lの季節2』をプレイしてみて、よりいっそう意識されることとなった。私の初回プレイは幻想界、しかしそれはあえてそう選んだのではなく、その選択肢がどちらの世界に繋がるものであるのか、わからないままに選択した結果である。その点、前作の最初の選択肢はわかりやすかったな。前作はカメラケースを選んだのだったよ。

 『Lの季節2』では、主人公がただの人間ではなく、特殊能力を持った存在として描かれている。そしてその能力はある少女を思い出させて――、そう星原百合だ。主人公の用いる力、ニューロマンシーは人間の記憶にアクセスし、また人の意識を操るものであるという。すなわちそれは、我々が一年前の事件で出会った星原の能力にほかならない。こうした点を見ても、この新作が前作を知るものを意識していることは明らかであり、そして実際に、前作を知るものならば容易に気がつくヒントがあちこちにちりばめられて、私の脳、記憶を刺戟してくれる。

 聖遼学園で事件が起こった。また――。それは再びではなく三たびだ。我々の知るかぎり最も古い事件は、幻想界ならば三年前、現実界なら二年前に遡る。そして我々もよく知る魔水晶事件が一年前。そして今年、主人公九門一馬は心霊管理局の要請を受けてその事件を捜査することになるのだが、その際、むやみに眠さを訴える少女に出会う。これ、普通のプレイヤーならなにも思わないところなんだろうが、しかし昨年の事件を経験している我々は違うぞ。あの一点で今年の中心人物は彼女と明らかになったようなものだ。こんな感じに、かつての経験に訴える要素がちらほらと見付けられて、もうこれはすごい。脳が動きまくっている。これを快感といわずしてなんといおう。実に興奮するのである。

 実は、私は九門一馬が幻想界の過去の星原の関係者なのではないかと思っていた。そう考えたのは、彼の使う魔法、ニューロマンシーのためなのだが、しかし彼はその力になれておらず、またそうした能力に長けたものについて詳しくないことからみても、その思いつきは否定されるべきものだろうと思われた。もしこの思いつきが正しいならば、我々の知ることのなかった幻想界の過去の星原の名を知ることも可能かも知れない。これは実は少し興奮することだ。さらに、これは明らかにネタバレで、しかしまだ推測に過ぎないのでなんともいえないのだが、ゆかなさんのインタビューによれば、天羽が幻想界にいくことがあるらしい。ということは、星原は? 星原もそうなのか!? とすれば、もしかしたら星原百合、鈴科流水音の夢の共演がなるかも知れない。うはー、もうわくわくじゃないか。ああ、もうどうすりゃいいってんだー! 実に興奮するのである。

 今回は男性キャラにも声がついていて、それは実に嬉しい変更点だ。けど、昔のギャルゲーの常識では、声がついているイコール攻略可能であったわけで、ということは、もしや、まさか、彼とー!? 興奮するのである。まあこれは冗談としてもだ、やはり話に関わってくるキャラに声がつくと、それだけで表現の幅が広がるから、嬉しい。だから、これは本当によい変更点だと思う。

 幻想界ルートを進めることとなった私にとって、最初に出会う前作キャラクターは舞波聖邪であったわけだが、そして彼の絡みで舞波優希も登場することになるのだが、そのお兄ちゃんが昨日変なことをいっていたみたいなことを優希の口から聞いた時、あのシスコン兄ちゃんのことだ、きっと、お前は兄以外のものを好きになっちゃいかんとか、ああ、これじゃちょっと問題か、聖邪は別にそこまでアレじゃない、お前は兄の認める者以外を好きになっちゃいかんとかいってたのかなと、それでこいつきっと誰のことも認めないんだよ、とかいって笑っていたんだ。まあ、その兄の話っていうのはほかならぬ仕事の話だったんだが、けれど話を進めたら、やつはシスコン兄ちゃんぶりをこれでもかって発揮して、さすが聖邪さんだ、期待を裏切らないぜ! もう聖邪さん大好き。最高に有能で、最高にクールで、その実、妹にめろめろで、妹のこととなると見境なくて、やばいぜ聖邪さん! 最高です。もっと突っ走ってください。

 けれど、聖邪さん話も最高なんだけれど、やっぱり私にとっては星原百合がすべての情報の中心にあって、思い出されること、新たに見出されるもの、すべては星原百合に注がれていると、そんな風に感じてしまう。あらゆることが彼女に繋がる。前作においては、まさしく渦の中心であったのが彼女で、そして私はまだその過去から逃れられずにいる。

 この先はまだまだ長いだろう。だから少しずつでも、新しい時間に慣れて、新しい関係に踏み込んでいきたい。きっとそれまでは、星原百合がすべての中心になるのだと思う。

 ああ、これは蛇足だが、こととねが2000年にリニューアルされた際、最初になされたのは既存の文章、レポートや論文のHTML化であったのだが、その作業が落ち着いてから、はじめて作られたオリジナルのカテゴリー、それがほかならぬ夏それは「Lの季節」或いは天羽の場合だった。私にとっても驚きだったが、しかし思いがけず初心にかえることができた。それは実に嬉しい副作用で、疲弊した精神も少しずつ生命を取り戻していくように感じられる。大げさなようだが、本当だ。


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公開日:2008.07.05
最終更新日:2008.07.05
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