【タイトル】 デュープリズム
【発売元】 スクウェア
【ジャンル】 A・RPG
【価格】 1999.10.14 発売 \5,800
【ハード】 プレイステーション
ひとつのストーリーをふたりの主人公が違った視点でたどる、それが実に楽しいゲームです。主人公が変わればストーリーも変わるのですが、そのどちらもが面白く、感動的でさえあります。このゲームの真骨頂は可愛くも味のある登場キャラクターたちと、彼らを取り巻く世界観。これら作品世界をゲーム全体にわたる緻密な作りがしっかりと支え、これほどにプレイしていて楽しいゲームもなかなかありません。
操作には少々癖があるものの慣れればそれほど難しくなく、自在に動き回れます。ただ、アクションゲームとしても決して優しくはないので、アクションが苦手だと厳しいシチュエーションもままあります。
とはいえ、やってみて楽しいのが一番。ポリゴンキャラがみせる芝居の実によく出来ていること。シナリオ、台詞、演出ともに作り手の技術、センスが光っており、そのどれもがハイクオリティ。気軽に楽しめて味わい深い、プレイしてみて損はない一品です。
以上400文字でした。
以下、無責任な感想をいくつか。
主人公ふたりの、実に対照的な性格づけもいいのですが、彼らを取り巻く全員が一筋縄ではいかないほどに味があって魅力的です。出てくるやつそれぞれにそれぞれのバックグランドがあり、どのキャラクターも愛すべきいいやつたち。この世界観に触れたら、引き込まれずにいられません。
主人公ルウ編のシリアスで哀しい物語も、主人公ミント編のばかばかしくも目頭熱くなる物語も、どちらも素敵です。
ストーリーの中核となる事件はひとつ、それを異なるモチベーションをもって追うルウとミントの物語は、錯綜しあいながら語られなかった部分を埋めあって進んでゆきます。ひとつのストーリーだけでは憎くて仕方がなかったキャラクターも、もうひとつのストーリーでかいま見える横顔は哀しみを映して、我々は彼らの世界をいとおしく思わずにはおられなくなっています。
透明感ある音楽。わくわくもはらはらも、どきどきもしんみりも全てを内に包み込み、我々の前に現れては、物語や物語世界、世界を構成する人物たちを彩ってゆきます。
厳しさも冷たさも、優しさも愛しさも含め、心に静かに沁みいくような音楽です。
一度聞くと忘れられないフレーズがそこかしこに満ちあふれて、気づけば言語野がそれらに侵食されまくってしまっているくらい、もう気持ちのいい台詞が山ほどです。
特にミントの啖呵は最高。気づけば口癖です。
以前はポリゴンキャラということだけで売りになったりしてましたが、この作品にいたってはそのポリゴンキャラが芝居を繰り広げるという、一歩先をいった表現の手段にまで達しています。
キャラクターは魅力的に動き、それが実に的確にストーリーを動かしていく。まさにポリゴン芝居の現時点でのもっとも魅力的な解答であると思います。
ルウは打撃主体、ミントは魔法主体で戦うキャラクターなのですが、ミントは跳び蹴りがとにかく強い。魔法いらず、ルウを上回る攻撃性を持っています。
さすが、跳び蹴りを必殺の技としているだけはあるなと、納得。
建物の中などを除いて、他は全て斜め上から見下ろすかたちの固定視点です。左右或いは前後に動くだけならそれでも特に問題はないのですが、上下前後左右に動く必要がある場合、距離感が掴めなくなるときがあります。
それがために妙に飛び越しにくくなっている穴とか足場があって、よく落っこちます。
でも、落ちても即アウトではないので、まだいいですけどね。
これは実は僕にとってはうれしい点だったのですが、謎解きが基本的にヒントなしなので、解けない人にはどうしようもなく難しく、投げ出しかねないところもあるかもしれません。
キャラクターが可愛くて話が面白くて、先を見たくて仕方がないのに、謎が解けない、敵に勝てない、で投げ出したりしたらもったいない。そんな感じです。
でも、その救済策として攻略本があるのだとすれば、別に大丈夫かな、とも思いますけど。
いやあ、現実に戻るのが辛いんです。それだけ求心力がある、ということなんでしょうが。現実捨てたくなるねえ。困ります。
ふたつのストーリーのうちどちらかやればいいか、と問われれば、僕はルウ編からやったほうがいい、と思います。その方が、彼らの人間関係の深さがわかると思いますので。
このゲーム、出荷の調整を誤ったのか、半額以下で売ってるところもたくさんあります。僕も半額以下で買いました。
だから、見たら買い。買って後悔はさせません。