【タイトル】 ダブルキャスト
【発売元】 SCEI
【ジャンル】 ADV
【価格】 1998.6.25発売 \4,800
【ハード】 プレイステーション
全編がムービーで構成された、やるドラシリーズの一作目。ムービーを多用するゲームの持つ、ムービーとゲーム本編の乖離という問題点を、ムービーそのものの中でゲームを展開することにより解決した、意欲作であるといえるでしょう。CD-ROM時代のアドベンチャーゲームの、理想のひとつがここにあります。
筋は、記憶喪失の少女に出会った少年が事件に巻き込まれていくという、わりとよくあるタイプです。けれどしっかりした演出と映像表現の確かさが陳腐と感じさせません。さすがプロダクションI. G、面目躍如たるところでしょう。
ただ、いざ謎解きとなると、プレイヤーがわかっていなくてもどしどし進んでいけるところに、根本的な問題があるように思えます。謎はプレイヤーではなく、ゲームの主人公が解くのです。このあたりは、あくまでもドラマといったところでしょうか。
100%を目指すと辛いですが、実は名作。お勧めできる一本です。
以上400文字でした。
以下、無責任な感想をいくつか。
昔から、やるドラのしようとした試みというのは試されてきていたように思えます。体験型ドラマとして、観客に展開を選択させるものは、実際に博覧会や視聴者参加型番組などでもおこなわれてきました。しかしそれらの問題点は、個人を相手にするには規模が大きすぎるというもの。ある意味民主的相違でもってドラマは展開し、自分の意見がいつも反映されるとは限りません。人によっては、欲求不満におちいりかねません。
それがプレイステーションというハードで、やるドラとして実現したのです。個人の意見が常に反映され、しかも何度でもプレイ化。こういうものを待ち望んでいただけに、喜びはひとしおです。こればっかりは、素直にハードの進化に敬服を示したいと思います。
100%を目指すとなれば話は別ですが、そうでないかぎり何度でもプレイして楽しめるのもいいでしょう。自分のこだわりの展開に話を進めて、それをリプレイに残しておくのは結構嬉しいものです。リプレイを通して見たことは、一度もないのですが。
今までのプレイの中で一度も見たことのないようなシーンを見つけると、やっぱり嬉しいものです。それが意外性に富むものならなおさらでしょう。長くブランクをあけた後に、また初めからプレイするのも意外と楽しくて、時間が出来たらまた取り組みたいと思います。
操作性は考え抜かれたもので、他の追従を許さないほどの快適さがあります。右手だけでも左手だけでも可能な操作は、だらだらと長時間プレイしなければならないこの手のゲームにおいて、もっとも重要であると強く感じました。
左右どちらでやってもすべての機能が使えるというのも重要です。他のアドベンチャーゲームも、ぜひ真似して欲しいほどの快適性なのです。
音楽にフュージョンっぽいのりがあって、かなりいい感じです。特に主人公が美月を意識するシーンの音楽は、まさにウェザーリポート。Black Market かと思いました(曲としては、全然似てませんけどね)。
他にも一部のタイトルバックや襲われるシーンで効果的に挿入される笑い声の、ざわざわとした感じ。実に好みです。
これは正直言ってやってられません。70%くらいまではよかったです。楽しんで出来ました。けれど80%を超したあたりから俄然達成率のあがりが悪くなり、90%を超えると作業以外のなにものでもなくなってしまいます。物語終盤の選択肢をひとつひとつつぶしては0.02%達成率アップ。やってられません。
やるドラがやるドラマというのなら、ぜひ内容で勝負して欲しかったのです。内容がしょぼいとはいいませんが、この達成率とそれにまつわるおまけは、このゲームを質のゲームから量のゲームに転換してしまうのです。
自分が既に見たシーンをコレクションして、それらを使って編集できるようなモードがあったら面白かったような気がするんです。それこそ、目指せ映像編集作家、とかいったのりで。こうなれば、おまけなしでもプレイヤーを100%クリアまで引っ張れたろうにな。
それに、シーンを組みあわせてそれをメモリカードにセーブして、友だちに見せるというのもちょっとした楽しみになるとは思いませんか。ああ、こんな表現もできるのかなんて。
これはしかたのないことだと思います。全編を動画にしてしまった以上、まったく別の展開を入れる余裕は皆無でしょう。ですが、もし可能ならばまったく意表をつくような展開や、進み方によってパラレルな世界を垣間見てしまうような面白さを期待したいのです。
このゲームは、いくつかのエンディングにおいて、本筋で語られているものとまったく違う設定がみられます。おざなりなものならやれやれですが、それが、本筋の設定とぎりぎりのところに位置していたりすると、妙な不気味ささえ感じられて、もっとその奇妙なパラレル感を楽しみたくなってくるのです。
この手のゲームは、何度もクリアするごとに物語の本質が見えてくるという一貫関連タイプと、いろいろな世界や設定に派生していく矛盾並列タイプに二分できるでしょう。やるドラの楽しみは、少なくとも後者にあるように思えるんですよ。
翔子ちゃんは重要キャラクターだと思っていたんですが、改めてプレイしてみると、ほとんどしゃべらないしほとんど出てきません。はっきりいって、名前を憶えてない人も多いんじゃないでしょうか。眼鏡をかけた、メイク担当の彼女です。
確かに今一度思い返してみると、全然重要でなかったような記憶がします。そうか、やっぱり自分の中だけで重要だったんでしょうね。残念。もっと出てきて欲しかったなあ。
はっきりいって人を選ぶゲームだと思います。たるい、面倒、やってられないという人と、面白い、やめられない、何度もプレイしたいという人に分かれるのではないでしょうか。僕は後者でした。
アニメとしてもよく出来ていると思います。突っ込みどころも満載ですが、そのあたりも含めて楽しめるのなら、買いだと思います。僕はそういう突っ込みどころや詰めの甘いところさえ楽しむ口なので、厳格に構成されたものが好きな人は手を出さないほうがいいかも。けれど、大筋緩急めりはりのよくついたよい展開、ストーリーです。
僕は素直にお勧めしますよ。