【タイトル】 天使のプレゼント マール王国物語
【発売元】 日本一ソフトウェア
【ジャンル】 RPG
【価格】 2000.12.21 発売 \5,800(限定版 \8,800)
【ハード】 プレイステーション2
歌あり踊りありのミュージカルRPG、マール王国シリーズの第三作目。前二作で語られなかった部分を埋めるショートエピソードの連続と思わせて、話を進めるごとにより深まってゆく愛の物語、ラストエピソードでは語りの力に涙さえもよおします。
とはいえゲームとしてはよくあるタイプ、シナリオも非常に素直で、一面単調にすぎるかも知れません。ですがシェリー、コルネット、クルルと続く物語に興味を引かれたものなら、彼女らのドラマに心動かされるはず、と信じます。いいかえれば、前作までのストーリーを知らなければ感動も薄いものにとどまりかねないということ。未プレイでも困りはしないでしょうが、知っているといないとでは大違いです。
マール王国らしいテイストは、全編にわたり健在。かなりブラックなギャグ、パロディ、どこか力の抜けた所には安心さえしますが、だからといって肝心のミュージカル部分が弱いようでは――ちょっと残念です。
以上400文字でした。
以下、無責任な感想をいくつか。
ラストエピソード「天使がくれた物語」での語り。決して斬新なことをいうわけでなし、静かに語られるばかりなのですが、結構じんとします。静かであればあるほど、染み入るものもあるのだと、私は思います。
ストーリーは、前二作のすき間を埋める補足的エピソードに終始し、そのため展開や結末は、完全に予測の範疇にとどまります。なので、こういう話を期待したい、と思えない人にはむきません。で、僕はといえば、こういうべたな話は嫌いじゃないので、よかったです、よかったですとも。
でもべたとはいえ、よくある話をそのまま流用したというような、あざとい感じはまったくありません。むしろ普遍性をもちうるテーマに真面目に取り組んだ結果、冒険よりも安定が選択されたのだと、私は思います。それだけに、より一層好感が持てるのです。
人の世の理不尽さを描いたラストエピソードでは、正直、涙ながれっぱなしでした。
さすがマール王国というか、やっぱり日本一ソフトウェアというべきか、ネタがあぶなくてあぶなくて、素敵です。子どもにはむかないネタ、一般人にはわからないだろうネタ。よくよくまあ、と思うくらいブラックでいかがわしさのひそむネタの数々。実に素晴らしい。
わからない人は、わからないままにしておいたほうがきっと仕合せ。でも、知ればもっと楽しめるのは事実でしょう。
本文でもいっていますが、今作ではミュージカルシーンが減ったために、伴い歌も少なくなっています。ですが、その歌の中に、ああいい歌だなあ、と思えるものがあって、しんみりとただ聴いていたこともありました。
それを最後の最後のエンドロールにもってきたのは、やっぱり、このテーマ曲こそがテーマなんだろうな、という思い入れを感じました。
登場人物は、前二作で中心的役割にあったものは当然、結構端役で忘れそうになっているのもフォロー。そのへんは、ファンディスク的要素も強い所以なのでしょう。
戦闘参加可能キャラは人形、人間ともに大幅増、というか前二作で出たキャラクターをほぼすべて網羅しています。人形に関しても、定番のシャルテ、テラ姉妹から兇悪ナイトスポーノまでいるし、子レジェム、フレール成竜まで用意。足りないのは、ミカエル、ケロラインくらいでしょう。
そのため、おまけシナリオでのパーティ編成が楽しいやら人いっぱいで困るやら。ぜいたくな悩みですな。
二週目以降は、以前クリア時のレベルを引き継いでスタートできます。そのため、より楽にストーリーを進められると思いきや、パーティ内最高レベルキャラにあわせた、強い敵も出てきて実にけんもほろろな感じ。いいです。せやけど、レベル100を超えたシェリー同等のホワイトドラゴンに、レベル10子どもチェロがどうしろというのか、というくらい序盤は困ります。
さっさと、高レベルを保持したモンスターを移籍しちゃいましょう。
基本的にレベルはあがりやすく、敵は簡単に死んでくれます。ボスも、よくあるインフレボスではないので、さくさくと進めて非常にいいです。
戦闘は△ボタン一発で、全力戦闘のオートモードに入ります。はっきりいって、雑魚戦闘はこれだけで充分。フェロモンXを装備して、楽々その界隈を歩けるようになったら、ボスも楽勝です。レベルもすぐにあがるし、なにも考えなくてすむし…… でも、これでええんかなあ。
心胆寒からしむる戦闘もなければ、プレイヤーの全存在に挑戦する謎かけも、闇に向かって口を開ける大迷宮もありません。だからパーティも好みで、装備品も適当で大丈夫です。
でもそれは求めるところが最初っから違うので、仕方がないのです。だからこれでいいのかも知れません。
前二作では、ここぞというところで渾身の力を込めて挿入されたミュージカルシーン。ですが、今回は以前ほどの見せ場はありません。PS2でどれほどの出来を見せつけてくれるか、かなり期待していたところなので、ちょいと肩透かしです。
全体を通してのクオリティはかなりあがっていたので、この点だけが残念です。