二千年七月

夕立

 暑い、僕は夏が嫌いだ。日本の夏はとにかく暑くて、蒸し暑くて、とても耐えられない。

 ところで、夏が変わってきているように思う。僕がまだ子どもだったころは今ほど暑くはなかった。穏やかでゆっくりとした、そういう美しくて詩的な時間があった、と思う。

 夏でいちばんいい時間は夕方だ。清少納言にいわせると、夏はよる、だけども、僕にとっては夕方だ。夕立が降る、強く、雨粒も大粒に。黒雲が空を陰らせる。かみなり雲だ! 子供たちは、雨を避けようと駆け出す。僕らがうちに逃げ込むとあたりは既に真っ暗、一面のねずみ色だ。

 僕らはなぜか、本当になぜかわからないけど、ひっそりと静まっている。あんなに熱かった太陽の下で、ついさっきまで力の限りはしゃいでいたのに。僕らは雨が通りすぎるのを待っている。雨粒が屋根を叩く音だけが響く中で。

 ほどなくして雨が止むと外はもう夕方だ。太陽はもう西にある。時間は静かに流れそよ風が吹いている。太陽はもう熱くなく、また蝉の声が聞こえ始める。

 これが僕の夏、でも僕の夏はもう巡ってこない。

(初出:Les douze mois au Japon, mais selon moiオリジナル:フランス語)


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公開日:2000.08.28
最終更新日:2001.09.02
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