夏といえば夏休み! 海に、山に出かけ、子どもは時間もなにもかも忘れて遊ぶ。なにもかも忘れて、これが危険なんだ。いずれ思い出すことになる、絶望とともに。
なにをいっているのかというと、宿題のことだ。日本には夏休みの宿題という、忌まわしくも呪われるべきものがある。しかも、山のようにあるのだ。
大人は、そんなにたくさんじゃないとか計画を立ててやりなさいなんていうけど、計画どおりに事を運べないのが子どもじゃないのか? 少なくとも僕はそうだった。
八月末、事態は最悪だ。手付かずの宿題が残されている。日本の二学期は九月に始まる。算数の問題集、自由研究に読書感想文、工作、そして夏休みの日記を前にして、茫然自失だ。
急いで片づけてしまわなければならない。問題集には適当な数字を埋め、手軽そうな自由研究のテーマと感想文用の本を選び、がらくたを作る。問題は日記だ。天気なんて憶えているわけがない。かくして古新聞の天気予報を引っ張り出すことになり、そのとき夏は過ぎ去ってしまっている。
絶対忘れない! 夏の初めにはいつもそう思う。けれど、後悔するように出来ている。
(初出:Les douze mois au Japon, mais selon moi,オリジナル:フランス語)