二千年九月

刈り入れ

 九月になると景色は一変する。夏から秋へと。色が、匂いが、空気が、すべてが輝き力強くあった夏から穏やかで優しい秋へと、変わっていく。

 帰り道、水田は一面の緑だった。緑は太陽をいっぱいに浴びていた。だがいつか、田が金色に染まっていることに気付く。金色、収穫の季節がやって来たのだ。

 注意深い目を持っていたなら、変わりゆくさまを見るだろう。はじめ、青い稲が膨らむ。まだ固まってもなく甘いのだ。重さを増すとその穂を垂れる。もし注意深い鼻もあるのなら、素晴らしい匂いを嗅ぐことだろう。しかも、青い稲と金色の稲では、その匂いが違うのだ。日が暮れ空が赤に沈むように、稲はその色を変えてゆく。

 そうしたら取り入れだ。昔は手で刈っていたが、今は機械で取り入れてしまう。それでも、僕が子どもだったころは、まだ天日に干していた。

 田のあちこちに干された稲束の間を、僕は仲間と一緒に駆け回った。僕らは稲束に突っ込み、二三本、穂を失敬したものだった。

 なんという悪がきだったろう。けれど、今となっては悪がきも、そんな風景も見なくなってしまった。

(初出:Les douze mois au Japon, mais selon moiオリジナル:フランス語)


日々思うことなど 2000年へ トップページに戻る

公開日:2000.10.10
最終更新日:2001.09.02
webmaster@kototone.jp
Creative Commons License
こととねは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示 - 継承 2.1 日本)の下でライセンスされています。