日本では、みんな他人に興味津々だ。 多かれ少なかれ誰でも人への興味を持っているが、日本人の興味はすこぶるだ。このことは、日本に関するエッセイ「Un spectacle amusant」を書いたイブ=マリー・アユー氏を辟易とさせている。彼によれば、日本はスパイ天国とのことだ。
日本人の興味は尽きることがない。もちろん、日本人のすべてが誰かのことをとやかく言うのが好きなわけではない。しかし、そのことを好む種族は、確実に存在している。それもたくさん。そして、彼らは彼らの話している噂話が、本当か嘘かわからなくなってしまうのだ。
ある夜のこと、僕は大学時代の同期に、ばったりとであった。その時の彼女の言葉を僕は忘れられずにいる。彼女は僕に、「結婚、おめでとう」といったのだ。
僕はついぞ知らなかった、僕が結婚してただなんて。ショックだった。僕は、僕のことをよく知っているつもりだったのに。僕の知るかぎり、僕は結婚なんてしていない。けれど、彼女は僕の結婚を露疑うことなく、つまり彼女の中では僕はもう既婚者だった。
日本とは、なんと恐ろしく奇怪な国だろうか。僕はその話を否定も肯定もしなかった。次に彼女に会うときには、もしかしたら僕はパパになっているかも知れない。
(初出:Allons au Japon!,オリジナル:フランス語)