本日、占い屋を、無事盛況のうちに畳むことが出来ました。それというのもひとえに、二日間この占い屋を支えて下さったお客様がたのお力、支えがあってのこと。特にリピーターとして何度も足を運んで下さった方、また口コミがあったのか、紹介というかたちでたくさんのお友達を連れてきて下さったお客様のおかげです。
いやあ、実にお客様は神様なのでした。
さて、ほぼ八時間休みなしのぶっ通しの占いマラソンを終え、頭はもうくらくら、頭痛がしますわ状態でこの文章を書いて、二日間を振り返りつつ占めたいと思っています。
というわけで、本日の話題はトピック。トピックについてお話ししたいと思います。
トピックといいますと分かりにくいですが、占いのテーマ、占ってもらいたい事象のことです。例えば、なにかを占って欲しくて来るはずのお客さんなのですが、なにを占われますかと問い掛けると、何が出来ますか? とか、将来について、などのただ漠然とした応えなどが返ってくることが意外や多いのです。
これが困ります。というのも、タロットという占術は、ある事象の持つ傾向をはかるのに向いているものであるという認識を、僕が持っているからです。別の言い方でたとえますと、台風予想のようなものといえるでしょう。実際に台風があって、その台風がどちらの方向へ進みそうということは予想できます。しかしまだ発生もしていないうちから台風の出来、進路を予想することはできない、というと分かっていただけるのではないかと思います。
なので、僕は漠然とした問い掛けをされるお客さんには、今現在一番興味のあるトピック、一番心に掛かっているトピックはなんですか、と問い掛けることによって、いわばテーマを絞ることにしています。こうすると、たいていの人は恋愛についてだとか進路についてだとかというようにトピックが絞られてきて、また恋愛について全般、というような漠然とした問い掛けをされた方でも、実は興味のある相手はいるんですう、というようなかたちで、話題が具体化されてきたりします。
これって大切なプロセスだと思います。
人間は、日頃いろいろなことに気や思いを巡らせて生きていますが、それでもすべての事象を明確な輪郭や具体性をもって捉えているわけではありません。むしろそれは漠然としたイメージとして認識されており、特別な事例やなにかが起こらないかぎり、はっきりと意識されることはないといっていいのではないでしょうか。
そういう不明瞭なものを明瞭に見る訓練をしている人もいますが、たいていの人にとって不明瞭なものは不明瞭なままで、漠然と捉えられたままです。その漠然とした対象を掘り下げ、明確な輪郭をもって描く行為こそは、問い掛けにほかならないのです。
だから僕は問いかけるわけです。そして、ある程度の明確さをもって事柄が浮かび上がってきたところで、占いはじめます。
ここで再び問い掛けが生じます。占いというのは答えを出してくれるものと思いきや、実は問い掛けの連続なのです。
タロットという占いは、象徴的位置におかれた象徴――カードを、読み解くという作業です。一枚のカードでは、幾重にも重なり合った象徴の持つどの層に焦点を当てていいか分からず、漠然とした結果に甘んずることになりますが、複数枚のカードからは、相関的作用によって、カードの意味を絞り、また新たな意味を読み取っていくことが出来るようになるのです。
すなわち、展開されたカードは、それをどう読むのかと占者に働き掛ける、問いそのものなのです。
僕は占うときに、被験者の積極的参加を求めます。というのは、読み解く行為は本来はその結果を手にするものの行為であるべきであり、僕は被験者とカードの間に立つ仲介者、翻訳者ないしは解釈者に過ぎないからです。
カードはそれだけではただの絵札に過ぎません。それを読み解くものと、読み解こうとする行為によってはじめて意味が見出されてくるものです。そして、その読み解こうという行為は、読み手の読み手自身への問い掛けとなり、自分の今まで気付かなかったような事柄に気付かせてくれるきっかけともなりうるのです。いわばタロットとは読み手を映す鏡であり、新たな問い掛け、トピックを提示させる動力なのです。