酒は飲んでも飲まれるなと申しますが、歳をとるごとにどんどん飲まれてしまう自分を発見して、ちょっと自信を無くしてしまったりします。昔は結構強いと思っていたのに、最近はもう全然。往時の調子で飲むと、帰り道できっちりまわって、大変なことになります。
それでも、酔ったその日は意外と大丈夫で、ふらふらになりながらも、ちゃんと帰ってこれます。記憶もおぼろげながら呼び起こせるし、途中自転車ごと倒れて、行き倒れそうになりはしたものの、無傷で帰還。へべれけになりながらも、落とし物忘れ物ひとつないのは、それだけ物に対する執着が強いというためでしょう。
目覚めた翌日、恐れていた宿酔はなく少々満足してみたり。けれど爽快にはほど遠く、わずかに頭も痛く、けれど昼前には回復するだろうと算段。まだまだいけるじゃないか、自分もまだ充分若いよ。こういう調子の乗り方が、意識せずとった歳月を自覚させて、少々落ち込みます。
食欲はなく、暴飲暴食の後なので胃に優しいものをと思いお粥を炊いて、もそもそと食べて横になって、回復を図ります。今日は昼過ぎに出かけねばならないので、それまでになんとかなればよいと気楽に考えたら、それが甘かった。宿酔はゆっくりと進行し、気付かないうちに体を蝕んでいたのでした。
電車に乗って十分間は地獄。席は空いておらず、入り口扉に突っ伏して襲ってくる悪寒を耐えていたら、それを見かねたご夫人が声をかけてくださった。
「気分悪いの?」
「いえ、ただの宿酔です」
自業自得なのでこれを噛みしめないといけません、お構いなくありがとう、と続けたら、ご夫人が、
「高校生?」
って、高校生が宿酔ってあきませんがな。
考えれば、高校を卒業した頃が一番酒に強かった。新歓コンパで浴びるほど飲まされてもけろっとして帰宅、翌日授業も平気の平左で出たものだった。
耐える意識のなかで昔を懐かしみ、切々と思いました。僕はもう若くない。