就寝前にゲストブックのチェックをしようとネットに繋ぐと、不穏な書き込みがあった。わ氏からの通報、自分のサイトが大変なことになっているという。いわれるままにいってみると、真黄色の毒々しいページが開き、しかもネット上では公開していない個人情報でもって、揶揄中傷したものに替えられていた。被害に遭ったのは、geocitiesで公開している「僕のお絵かき計画」。どうやらFTPパスワードが盗まれたらしい。
パスワードが変更されていないことを祈りながら、管理者用ページへいこうと手を尽くしている間に、ゲストブックには知人からの激励ツリーが伸びている。その時、ふと脳裏に巨大掲示板に対する疑惑がよぎった。
Googleに跳び、思いつく単語で次々と検索するも証拠は出ず、途方に暮れていると、再びわ氏からの注意が入った。アクセスカウンターの値が、昨年末は三百件だったのに、今は万を超えている。増え方が半端ではないと。いよいよ巨大掲示板への疑惑は膨らんでいく。
ウォッチされている! 一体なぜ自分が標的になったのだろう。日頃、ネットでは目立たないようにしていたはずなのに。疑問は募る。ハッキングされたページを見るかぎり、こちらが何者か、完全に把握されていると見ていいだろう。知らぬ間に自分の部屋に入り込まれ、物色され、監視されている。そんな嫌な気分が脂汗を流させた。気分が悪くなり、やり場のない怒りが渦巻いて。その時、書棚に一枚のグリーティングメッセージが残されているのに気がついた。
巨大掲示板の絵本板有志からのものだった。
FTPパスワードを取り戻すか、あるいはすべてを取り下げて沈黙するか。乗り込んで応戦すれば、後は泥沼だろう。悩み茫然自失として、書棚から一冊の古書を手に取ったとき、ようやく目が覚めてすべてが夢と知った。
茫漠とした夢現の中で、パスワードを早く、もっと分かりにくいものに変えようと焦っていた。