目黒寄生虫館は、小規模ではあるものの、全国的な知名度を持っている専門博物館である。その存在をまったく聞いたことがないという人のほうが、むしろ少ないのではないだろうか。
これほどの知名度をもつにいたったのは、館の持つ専門性に加え希少性という部分もあるだろう。寄生虫という、むしろ忌み嫌われる存在を扱っているだけでも、館の特殊性がわかるというもの。日本国内の寄生虫のほとんどが撲滅されたといってすらいい状況において、これだけ多くの寄生虫とその生態に触れられる場所は、ほかにないといっていい。
展示スペースは館の一二階部分に限られているため、展示点数は決して多いとはいえない。展示は寄生虫とその生態を説明するパネルと、ホルマリン漬けの標本が中心。ただぼうっと見ているだけでもどこかかゆくなるような嫌悪感があって、それでも目を離せない存在感を持っている。親やその上の世代から聞いた寄生虫体験談を思い出しながら、改めて彼らに出会わずにすんでいることに安堵してみたり、蟯虫検査シートを見て子ども時分を懐かしんでみたり。寄生虫に寄せる思いも、いろいろだ。
われわれ若い世代は、寄生虫体験が少ないばかりにその怖さも実感せずにいる。それを実感できるだけでもめっけもん、もちろん怖いもの見たさ、珍しいもの見たさでいっても、きっと楽しめる博物館だ。
なお、二階にはミュージアムショップもあって、いろいろな寄生虫グッズを買うこともできる。図録にサナダムシTシャツ、館のシンボルにもなっているフタゴムシペンダントなど。けれど僕は、ちょっと寄生虫を身近に置きたいとは思えなくて、そのどれも買えずじまいだった。もし、僕は私は寄生虫を愛せる、という方がいらっしゃったら、ぜひグッズを購入して、彼らをいつも身近に感じてあげてください。