揺らぐ周辺都市の優位

 地域にひしめく競合店が、個性的展開を繰り広げるために生じる商品層の幅広さ。住民は近郷の中心都市に向かい、空洞化する消費が見逃したレア商品がどこかに眠っている。周辺都市は、その特性を知り尽くしたものにとっては、まさに宝の山。

 周辺都市の優位が揺らいでいる。

 それは突然に訪れたわけではない。徐々に進行する変化にただ気付くのが遅すぎた。数ある店舗は次々と閉じられ、個性的というよりも一般性を前面に押し出した、ありきたりの顔をした店だけが残った。

 世は高度消費社会。不況下といいながらも確実に売れる商品はどこかにあり、消費者はもとより、売る側、生産する側も目の色を変えて飛びつく。消費の気まぐれにより売れ筋は移り変わり、裏を打つと致命傷になる。昨日の売れ筋は今日の不良在庫。数を撃ち、当たったものから絞り取れるだけ絞る焼畑的商魂が巷にあふれ、街は誰もが欲しがる消費記号一色。かくしてあれほど個性的だった商品棚は、画一化のもとに駆逐されてしまった。

 売れるものが固定化すれば、大規模店の独壇場となる。大量仕入れが商品の一極集中を招き、小規模店はじり貧。撤退戦を強いられるなか、小売店は人気商品を少しでも多く確保しようと躍起になる。結果われわれを取り巻くのは、売れ筋が多いか少ないかという、量の優劣だけがまかり通る貧しい消費文化だ。

 この様な状況下で、周辺都市の優位は失われてしまった。小規模店の在庫はそれほど多くはなく、ひとつの商品を求めて街を巡っても結局それを手に入れられないとしたら、在庫数に優る大規模店に行くほかはない。増加する一方の商品点数は規模の大小を問わず小売を圧迫し、体力のないところから倒れていく。周辺都市における消費の空洞化はこれからもますます進み、画一化はとどまるところを知らず明日の多様性を塗りつぶす。

 だから僕は今日も周辺都市を巡る。せめてもの抵抗として、愛する文化を支えたいゆえ。


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公開日:2001.03.07
最終更新日:2001.09.02
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