そして北海道も最終日。帰る日の朝は早く、なにしろ昼の便に乗るのですから、早く出ないことには飛行機に間に合わないのです。とはいえかつてのローマ最終日ほどではなく、ちょっと早めの通勤くらいにはゆっくりできたのでした。でも、朝食は抜き。空港に着いてから食べればいい。
札幌の市街もこれで見納めと思えば、なにかしら縁のあったサッポロファクトリーも朝早く灯が消えていることもあってしんみりと見えて、歩道に積った雪、昨夜ここを走ったであろう車のわだちを伝いながら、札幌駅へ向かいます。もう何度も通った道、通勤で通る人もちらほら見えて、最後は雪をよけて地下からJR札幌駅構内に入ったのでした。
JR札幌駅は広くだだっ広く、それに開けっ広げで、なにより寒い。寒いのは北海道だから仕方がないとしても、駅構内が寒いのってやっぱりなんか納得いきません。さすがにこの三日間北海道の寒さを骨身に感じただけに、帰る今日はそれほど寒いとは思いませんでした。けれど、やっぱりどことなく薄ら寒いんですよね。この大きな駅を暖房するのも大変だろうから、仕方がないのかも知れませんが、やっぱり開けっ広げなのが寒さの一番の原因だと思います。
本日もこりずに雑誌のスタンドに寄ります。まんがタイムラブリーはないか、ラブリーはないか――、そうかやっぱりないか――
こういうあきらめの悪いところが僕の僕らしいところでしょう。
さて、札幌駅で見かけた北海道の銘菓をちょっと紹介。その名もねこのたまご。松竹屋製菓謹製のその菓子は冷蔵庫に入っていて、見た目はお餅。中身はクリームなんだそうで、変わり大福の一種かと思われます。思われますってのは、食べてないんですよ。なんといってもJR札幌駅は寒いし、そこで要冷蔵のお菓子を食べるというのも辛いものがあります。なのでキオスクで売られているのとその広告を見ただけですが、その広告、キャッチフレーズというのが妙に親しみもててよい感じだったのです。
なぜねこのたまごというのかというと、この菓子を前にしている飼い猫がなんか卵を温めているみたいに見えて、それでねこのたまごという名前に決めたのだそうです。猫のパセリはもう亡くなったのだそうですが、それでも広告ポップにその写真を掲げているところに、親ばかぽい親しみやすさが感じられて、もし日保ちのするものならお土産に買って帰りたいと思ったくらいでした。
実はなぜねこのたまごをここで書いたのかというと、猫写真を毎日公開している友人がおりまして、実は彼の土産にこれをと思って断念したからだったのでした。他には熊カレーなんかも目論んだのですが、あんまり奇抜すぎるものを選ぶってのもなあ。
というわけで土産は空港に持ち越しで、電車乗って札幌ともお別れです。
新千歳空港に着いて、飛行機が関係する行程では余裕をもって行動するようにしているおかげで、軽く一時間以上の余裕がありました。食事に一時間使ったとしても、まだ一時間以上の余裕があります。その余裕を利用して、土産物の物色です。
とその前に、新千歳空港内では興味深いイベントが開催中でした。「リカちゃん&ベイブレードフェスタ 2002」。ベイブレード!? じゃなくてリカちゃんですよ、リカちゃん。
リカちゃんというのは説明する必要もないほど全国的に有名ですが、一応触れておきましょう。タカラ社からリリースされている、着せ替え人形のシリーズです。おっと、リカちゃんは生誕三十五周年だそうで僕よりずっと年上。つまりリカさんと呼ぶのが道理です。ですがここはあえて親しみをこめて、リカちゃんと呼んでおきましょう。
まず目を引くのは入り口にどんと御座します等身大のリカちゃんでしょう。ピンクのドレスをまとって、黄色いプラスチックチェーンの向こうに立つそのたたずまいはまさに女王の貫録です。とまあなんとでも言えるわけですが、撮影会よろしくカメラ三台を駆使してリカちゃんを撮影しているのは、はた目にさぞ異常な光景と映ったのではないかと、昔を振り返っては若気の至りと目を細めるのでありました。
さておき、この展示は小さいながらも結構充実していて、リカちゃんファン(かなり多い)にはもちろん、昔リカちゃんで遊んだ世代の人たちには懐かしく楽しめるのではないかという、なかなかのものでした。会場には昔のテレビCMが流され、リカちゃんハウスや関連の人形(家族や友達なんか)がずらり並んでいます。そして初代から現行の五代目までのリカちゃんがそろい踏み。歌は世につれ世は歌につれ、リカちゃんも時代に応じて姿を変えているというのはよく知られた話、これを見ると、自分が子供の頃に見ていたリカちゃんが三代目であったと分かります。
一言言い添えておきますと、子供の頃はリカちゃんで遊んだことはないのであしからず。いやそう言うと語弊があるか。大人になってからもリカちゃんで遊んだことはないので、また所有していたこともないのであしからず(僕にとってタカラというとチョロQでした)。
ただ、年上の従姉が持っていたのを懐かしく思いだすのですよ。
北海道で土産物を買うとなると、意外と難しくて困ってしまう。北海道というくらいだから(?)いくらでもありそうに思うんだけど、海産物農産物はすぐに渡さないことには傷んでしまうし、ムックリはコアなマニアならまだしも普通の人は喜ばない。その点北一硝子は非常にポイント高いのですが、女性に贈るのならまだしも普通の男は色硝子の一輪挿しなんてもらっても嬉しくないです。僕もきっと困ってしまうでしょう。贈ろうと思って選ぶのは楽しいですよ、意外と嫌いじゃないんです。でももらっても挿す花なんてないし、結局持て余して人に取られたりするんですよ。なので、男には硝子の器なんて贈るだけ無駄というお話でした。あ、それと花もね。
以上の経緯で絞り込んだというか勝手に道が狭くなってしまったというか、残るはどこにでもあるような土産物のオンパレード。例えば、そう、キーホルダー、サンリオの小物、灰皿、ペナント、地域限定の菓子。とりあえず、職場のあの人にはタオル地のアイヌ・キティのハンカチでも贈っておこう。この手のものは定価が明示的なので、贈るにはちょっと不都合なんですよね。と、こんな感じで土産は少しずつ決まっていくのですが、本命が決まらないのは困ります。
蟹の手のかたちをしたライターというのがありまして、蟹爪が開いてその爪と爪の合間から火を吹くという、ちゃちなんだけど面白い。まさに蟹光線という感じでしたが、煙草を吸わない人にライターを贈ってどうしようというのですか。残念ながらこれはパス、置物みたいのもパス。日保ちさえするなら、迷わずねこのたまごだったというのに。ぎりぎりまで迷って、故事にならいいっそ熊カレーにするかとも思ったのですが、結局無難に熊のキーホルダーでまとめました。
やっぱりキーホルダーって、かさばらなくしもらっても積極的には困らないものだから、無難なんですよ。
そう言えば、熊出没注意ってのもありましたね。あれがあんなに有名になってなかったら、迷わずこれ選んでたと思います。
搭乗まで残すは一時間。お昼には少し早い時間ですが、そろそろ昼食でもとりましょう。というか、今日は朝ごはん抜いてるし――
北海道最後の食事はなににしようか、できれば北海道っぽいものがいいなと思い、海鮮丼の食べられる展望レストランを選択。なぜ展望レストランなのかというと、まあ予算上の都合がありまして…… そりゃここよりおいしいだろうなと思う店もありましたが、そう思わせるだけの値段が張り付いておりまして……
というわけで、展望レストランです。展望ってなにを見るのかというと、飛行場での展望といえばそりゃもう滑走路しかないわけで、滑走路から離陸するそして着陸する飛行機を見ながらの食事が楽しみです。いやぁ、雰囲気はファミレスなんですがこういう展望があるというのはそれだけでもいい感じじゃありませんか。
頼んだのは海鮮丼とラーメンでした。雲丹といくらがのっている丼は、残念ながらちょっとボリュームがなく鮮度も今ひとつですが、まあ値段からすればこんなものでしょう。そこそこおいしくいただいて、ラーメンは麺が太く、北海道のラーメンは麺が太いというのが特徴なのだそうです。僕は麺は細いほうが好きかも〜。
窓から見える飛行機はJALやANAといった定番ものからAIR DOのポップなカラーの可愛い飛行機なんかもあって、見てるとちょっとあきません。滑走路には、昨日降ったものでしょう、薄く雪が積もっていて、これから飛行機に乗ろうというのにちょっと怖かったりしたのですが、まあ北海道の人は慣れてるだろうから飛行機でも平気だろう(飛べば一緒だ)と思い直し、時間が来たのを見計らってレストランを後にしました。
先ほどまで土産物を物色していた名店街を横目に見ながらゲートをくぐり、チェックしてる係官がかわいいなあ(女性)と不埒にもの思いしながら、しかし帰りは用心したものだからならず、こうして無事飛行機に乗り込んだのでありました。
飛行機に乗れば、後は離陸、水平飛行、一時間後着陸、大阪――、日常に帰ってきます。飛行機では旅の疲れが出たのか少々寝入って、日中のすいたモノレールは乗り慣れない僕には少しまだ旅気分でした。
あ、そうそう。ずっと買えなかったまんがタイムラブリー。自宅最寄り駅そばのコンビニで無事ゲットでした。
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