路上にあふれる違法行為の数々! 自動車免許を取るべく教習所に通って、おそらく誰もが経験することだろう、道路交通法の細々を知ってはじめて分かる路上の無法ぶりに驚きを禁じえなかった。今までは当たり前のように思っていた、歩道に乗り上げて止まる自動四輪車や横断歩道を渡ろうとする歩行者に気付きながら決して止まらない車など。それらすべては違反行為である。学科教習を受けて世界はまさに転倒したのである。
このことを私の半年前に普通自動車免許を取得した知人に言うと、やはり彼も同様に思ったそうである。免許を取って数ヶ月は違法無法に憤慨しつつの運転だったと彼は言うのであるが、だが免許を取って半年も経つとむしろまわりに合わせたほうがよい、いや合わせないほうが危ないと分かったと言う。意外だった。なにが意外と言っても、この知人というのが原理主義的というかなんというか、よく言えば厳格で悪く言えば頑固なのである。法規は厳守とでも言いそうな彼がそのような柔軟な思考をすることに虚を衝かれる思いであった。
さて世界のいかに無法であるかを知った私の生き方はどのように変わったのだろうか。実はまったく変わらなかったのである。知人への学科教習影響期間は先ほど言ったとおり半年であった。私の場合はなんと一月もたなかったのである。免許取得後一ヶ月ではない。教習中の一月であるから、そうちょうど第一段階を終えるか終えないかくらいの時期であろう。法を犯すことに平気なのではない。他人の行為に無頓着なのである。そして一般に他人に無頓着なものは自分にも同様である。かくして私は法規にがんじがらめになることなく、よく言えば鷹揚に生活している。気が短いわりに根が急がぬ人間である。待つなら待つさ、結局はマイペースであること知人に変わらない。
ただ一点だけ。五条通に歩いていたとき歩道を走る軽自動車を見た。あれはさすがに無頓着ではいられなかった。