熱に浮かされながら私は、決まって同じ夢を見る。日が暮れようとする薄闇、橙色のカーテンを通して室内は沈んだ暖色に染まっている。私は夢現をさまよって、峠を越した微熱がやわらかに体力を奪い心を錯乱させる。咽喉が渇いたような気もする。けれど動こうという気もしないほどぐったりとして、目を閉じてしばらく、また目を開けて、暖色の部屋は少しずつ色を失っていく。
このタイミングである。何度となく同じ体験を繰り返してきた私には分かるのである。突然めまいしながら倒れるような感覚に襲われ、見上げた天井が回転しながら遠ざかっていく。自分のからだが小さく縮んでいく感触は、どれほど繰り返そうと慣れない。血の気が失せるいやな気分がするのを目をじっとつむってやり過ごして、次に目が覚めたときにはなにごともなかったように私は布団に横になっているのだ。
白いシーツの上に明かりが灯る。温度を感じさせないおぼろとした光の中に、小さな花が首をもたげて咲く。その花はすみれに似て、小さい身の丈に命の強さを感じさせる感動的な一瞬。儚げな美しさがあり、私はこれを見るのが本当に好きだ。
花のかたわらには、西洋の妖精が寄り添っているのが見える。小さく、緑の服を着て羽をはやしている。妖精と私に見守られながら花は賢明に咲こうと身を起こして、いよいよ花が咲き終えようというときに、不意に重圧が天井から落ちてきて、花も妖精ももろともに踏みつぶしてしまった。
眼に見えない巨大な足、巨人の足である。もしかしたら私は見ているのかも知れないが、落ちてくる勢いが大きすぎて、きっと私は目をつむってしまうのである。決まってそれは右足で、太い丸太のような脚の存在が部屋中に満杯になって、それ以外のものは――自分も含めて、そこから追い出されてしまうのだ。
花はきっと散ってしまった。妖精も吹き消えてしまった。目を空けた部屋はなにごともなく、もうなにも見えない。