輸入盤規制法に反対する

 先だっての国会で成立した著作権法の一部を改正する法律。運用の実際について、東京税関の現役の統括審査官に話を聞いた人がいるらしい。

「改正著作権法により、 音楽CDの輸入に制限が掛けられるようになったが、アジア諸国からCDを輸入するにはどうすればいいのか」

アジア諸国からのCDは輸入できない。並行輸入もだめ。所有権の放棄を求めることになるだろう。」

 法案審議の課程で、規制対象はあくまで逆輸入される邦楽アジア盤であり、個人輸入の制限はないと明言されたはずだが、そうした視点はすっぽり抜け落ちてしまっている。すなわちアジア盤CDは一切合切輸入禁止と考えていいようだ。

 1999年、NHK中国語会話で台湾の歌手順子の「写一首歌」が紹介された。私はその歌をいたく気に入り、ぜひ中文版を欲しいとCD店に足を運んだ。最初の店で見付けたのは日本盤で、曲名は「April 5, 1969」。実はここまでは正しい。この曲にはふたつの題があるのだ。けれどこの盤に収録されているのは英語版みたいだったので、ちょっと遠くの輸入盤を扱う店に行って無事台湾盤を買うことができた。めでたしめでたし――、法の施行された暁にはこのような買い物が許されなくなる。ところで私は聞きたいのだが、私の買い物のどこかに社会ないし公共の利益に反する要素があっただろうか。

 森巣博はいっている。

犯罪には、殺人のような自然犯罪と呼ばれるものと、むしろ法律があるために成立する法定犯罪と呼ばれるものとがある。そして法定犯罪とは、その共同体に住む人たちの社会をより住みよくするため、あるいは人間の可能性の発展を他からの理不尽な干渉から守るために作成されたものなのであろう。その尊き立法の精神に従って、誰もが州の教育法を無視したのであった。ただただわたしは畏れ入った。

 対し、私たちの国では法は恣意的に運用されるもので、社会をより住みにくくし、理不尽な干渉を行うためのものなのであろう。ほとほと私も畏れ入ったよ。

 法はいずれ粛々と施行される運びであるが、その運用を監視しようという動きもあるようだし、実際の運用についての議論もこれから始まろうとしているところだ。それに折よく今は参院選挙の真っ直中。劣勢の状況ではあるが、打てる手があるなら細大漏らさずやっておく。それくらいの気概で挑まないときっと後悔する破目になる――、そういう気配がひしひしするのだ。

参考資料

引用した資料


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公開日:2004.07.02
最終更新日:2004.07.12
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