マニアの血が思いがけず目覚めたせいで日常が落ち着かない。始終いらんことを考えて、どうにも高ぶりがおさまらない。しゃあない、これはもう昔の資産を持ち出してくるしかあるまいなと、『ママは小学4年生』の箱を出してきて、最終話を見てみることにした。いいですよ、『ママは小学4年生』。タイトルこそはショッキングだが、内容はもう感動の嵐、嵐、嵐。自分は、この作品に出会えてよかったと、心からうけがうことができる。だって、箱買っちまったくらいだもん。好きじゃなきゃ、箱なんて買えないよ。
さて、私のいう箱というのはDVD BOXではなくLD BOXのことなのであるが、これが実に困ったことになってきた。今更いうまでもなくプレーヤーの問題である。機械というものはいつか壊れるものであり、だから当然私も、いずれ壊れる日のくることを頭の片隅にいれていた。だんだんとディスクトレイの動きが鈍り、バネの動く音であろうか、異音のするのを気にかけていた。しかし私は普段それほどLDを視聴するわけではなく、いつか修理しなければと思いながらも、この問題を意識の奥に押し込めることも不可能ではなかった。
しかし、今日だけは状況が違った。電源を入れトレイをイジェクトしようとすれば、それが出ない。うんうん唸るばかりで、一向にトレイが出てこない。これでは見るどころではない。正直、終わったと思った。
私のプレーヤーはパイオニアのCLD-757。自動でAB面反転し、音声に関してもパイオニア独自のレガートリンクコンバージョン搭載。意外といいものを使ってるだろう(マニアだからな)。しかしいくらいいものだといっても、トレイが開かないではどうしようもない。修理だ。しかしLDプレーヤーの場合、部品という問題がある。部品がなければ、もちろん修理などできないのだから。
パイオニアのサイトを見れば、残念なことに修理可能品リストにCLD-757はなかった。つまり部品は在庫限りということである。しかし壊れたままにするには惜しい機械である。なにしろ、CDプレイヤーとしてもかなりの出来のもので、そりゃ最近は使ってなかったさ。けれど、使わないと使えないでは天と地ほどの開きがある。電話して問い合わせるほかなかった。
ちなみに補修部品の保持期間は製造終了後八年間と決められている。電話で聞けば、CLD-757の製造終了はどうも1993年であったとのことである。ああ、じゃあ2001年までに修理出せばよかったのか。それなら安心して任せて、完働品になって帰ってくるのを待つばかりだった。だが今となれば、直らず帰ってくる場合も織り込んでおかなければならない。とうから覚悟していたことだ、不安というほどではない。だが、やはり自分の持ち物が修理不可といわれるのは、切なくやるせないことであることには違いないのだ。しかもプレーヤーの場合、持っているソフトの問題もある。やるせなさはいよいよ募り、人の世の空しさ儚さを思うまでにいたる。いや、こういう人は実際多いんじゃないだろうか。少なくとも、私だけということはないはずだ。
LDプレーヤーが直るにせよ直らないにせよ、いずれ決断しなければならない。今手持ちのLD資産をバックアップするかあるいはアップグレードするかという判断を下さなければならないのである。バックアップとは、DVDレコーダー等を用い別メディアに記録すること。では、アップグレードとはなにか。今もっているLD資産を、新メディアに買い替えるということである。いや、買い替えるじゃないな、この場合、買い足すが正しい。捨てるなんてことは絶対あり得ないんだから。
ここに問題があった。もし私が現時点に生きるおたくであったら、DVD買い直しくらいなんの躊躇もなかった。しかし残念なことに、今の私は過去に生きるおたくである。投入可能な資金も情熱も、底を尽きかけている。