私の枕草子

 枕を買った。ほら、あのゆかりちゃんがなんかふにょっと!といい、しかしなんとゆーかこのまったりとモチモチした感触が…といったあの枕ですよ。夫婦な生活のみえこさんがきぼち…い…と沈んだ低反発なやつ、奥様は女子大生のミオさんがテンピュールの枕が当たりますようにと初日に祈った、あの枕ですよ。

 その枕を、なんと三千円で買える機会を得たので、思わず即買いしてしまった。にゃもちゃんの購入した2000年当時は一万円ちょっとしたものが、いまや三千円。恐るべき価格破壊! しかし黒沢先生のがフラ――デンマーク製だったのに対し、私の買ったのは台湾製。つまり類似品であるのだな。

 この枕は、宇宙枕なんて訳の分からん呼び方をされたりもするのだが、その呼び名は、宇宙船の乗組員を発射時のGから守る目的で開発された低反発性の新素材を使っていることに由来するらしい。頭の重さを受けた部分だけが自然に沈み、重みのかからない部分は原形を保つ。この性質により、骨格の自然なかたちが歪まず、脳への酸素供給がスムーズに行われるようになるらしい。ともかく、よく眠れるらしいのだ。

 実はこのところよく眠れてなくて、その原因はどうも枕にあると思しい。実は今使っている枕というのがあまりよくない。家族の誰もがしんどいといって使わなくなったものを、そんないわれようをされねばならないほど酷いものと感じなかった私が引き取ったのが一月ちょっと前。頭を載せる部分が凹んでいて、仰向けに寝るだけなら落ち着きがよいのに、寝返りを打てば途端に悪くなる。頭が固定されたようになって、無理な姿勢を強いられるらしい。このところの肩凝りのひどさ、伴う頭痛鼻詰まり、疲れは取れず、夜中に何度か目が覚めることもしばしば。枕のせいかも知れないと思っていた。

 この疑いがあったので、上新電機のチラシにでていた三千円の宇宙枕に飛びついたと、そういうわけだ。

 この枕の真価は、これから問われることとなる。請うご期待だ、というか私が一番期待している。疲れが取れてくれると嬉しいなあ。

初日の評価

 低反発枕というのはもっと厚みがあるものと思っていたので、店頭で箱を見たときにはその薄っぺらさに驚いてしまった。帰りの電車内で、我慢できずに手を差し入れて触ってみたときの、その柔らかさにもまた驚いてしまった。低反発というからにはもっと固いもので、それが頭部の重さと温度を受け長時間をかけて変化していくものと思い込んでいた。

 思ったよりも薄い枕だったが、実際寝てみると、低すぎるのではないかという当初の心配もまったく的外れであったと分かった。なんというか、固さであるとかは絶妙ですな。これ以上に柔らかければ頭が沈みすぎると思う。固ければ、そもそも寝心地が悪いだろう。ところがこの、低反発の特徴といったらいいのか、頭をぺったりと受け止めて安定するバランス感覚というのが今までになかった感じで、上を向いても無駄なく、横になってもしんどさがない。枕が人に添うといったらいいだろうか。人体に無理をさせないというのが、なにより単純にして一番大切なことだと納得した。

 それで、寝てみてどうだったかというと、すごいね、朝六時にぱっと目が覚めて、寝たという感覚を久しぶりに得ることができた。この数年は、朝どうもぐずぐずとして、何時間寝ても寝たりない感じがあったわけさ。それが、たったの六時間そこそこの眠りで、眠ったという実感を持てた。いや、これはこの枕がすごいと聞いていて、期待しながら床に入ったためのプラセボかも知らない。だから今すぐにこの枕の効力をいうのは、あまりに偏った思い込みであるかも知れない。

 というわけで、この最初の一週間でどれだけの違いがあったかを判断したいと思う。だって、今日は一日活動してみて、しんどくて眠たくて仕方がないんだもの。すぐには効果なんて出ないもんだろうからね。

使用一週間後の評価

 富永ゆかり曰く、低反発まくらは意外と固い――らしい。想像していた柔らかさがどの程度だったか。ここに感想の差が現れてくるのだろうが、いや意外とそうでもないのかも知れない。低反発枕は、ゆっくりと加わる力に対しては柔らかくかたちを変えるが、衝撃にはしっかりと耐えて受け止めてくれるようだ。粘度が高いという言い方が、私にはしっくりくる。なんか、水みたいだな。

 さて、低反発枕を一週間使ってみた。感想は、悪くないけれど今やもう普通になってしまって、感動がないのだわ。いや、この普通に身近にあって意識されないというのは、よい道具の条件である。ペンにせよコンピュータにせよ楽器にせよなんにせよ、問題なくスムーズにことが運んでいるうちは、その存在を意識しない。まさに手の延長、体の一部になっている。その存在を常に感じさせるというのは、どこかに不具合がある場合が非常に多い。反応が鈍い、書き味が悪い、鳴りがしっくりこない、湿気のせいで関節が痛い、などなど。つまり、使っていることを意識させない自然さという点で、この枕は合格だろう。一週間にして、早日常に溶け込んでしまった。

 あまりに無理がないせいか、土曜日は昼の三時まで寝てしまった。寝過ぎだ。日課をこなせないじゃないか。それまでため込んでいた疲れをすべて吐き出すかのごとくに寝た。いや、私は元来何時間でも寝られるたちのようで、それは悩みの種でもある。ともあれ、寝やすいというのは悩みが増えるな。

 今は春なので、暁を覚えないこというまでもない。朝、どれほど寝ても眠い。ただ一日はすっきりしているように感じられる。一週間前まで悩んでいた肩凝りのひどさが消えたのも大きく、ただそれでもうっすらとはびこる凝りが背中に染みついていて、こればっかりは枕でどうにかなるものではなかった。

 あんまにいくかなあ。でもそんな余裕ないんだよね。

続く

参考文献


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公開日:2004.03.16
最終更新日:2004.03.23
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