このところいらいらが続いて、どうも落ち着かない。理由もなく気持ちが荒れる。なにもかもを投げ出してしまいたいような衝動に駆られる。いったいどうしたものだろうかと思っていたのだが、どうやら原因が判明した。花粉だ。どうやら私にも花粉症の症状が出ているらしい。
花粉症。そもそもアレルギー体質の私であるから、花粉だけは大丈夫というのも変な話であったのだ。かなり前、阪大病院が吹田ではなく福島にあった頃、アレルゲンを調べたことがあるのだが、ハウスダストが主たる原因とのこと。動植物由来の物質が問題になるようなことはなさそうで、いや、別にその結果をもって自分は花粉症でないと高を括っていたわけでもないのだが、しかしひどい症状に悩む人を見れば、自分は運が良かったと思っていた。ただ、その運のよさがいつまで続くものか、それが心配だった。
この間漫画の会で会った人――、私はその人のことが好きで、だからなんとしても漫画の会には出るのだが、――その人の恰好たるやかなりの重装備。目深に帽子、口元はマスクで防御、丈の長いコートには花粉対策が施してあるという。目をしっかりとカバーする防塵眼鏡も用意されていて、ここまでしなければならないかと恐れ入った。もし私がこれで出歩けば、間違いなく職質、運が悪ければ連行だろう。
眠れないのだそうだ。マスクの向こうを見れば、鼻のまわりのかさぶたが痛々しい。日本中を回っているその人のいうには、水戸の花粉がひどかったという。さながら地獄だという。この苦しみは後ひと月だか続いて、だから私は、せめて一年の残りの日々がその人にとって安寧であればいいのにと願う気持ちだ。
とまあ、その日はそれでも他人事だった花粉症が、急に他人事ではなくなってしまった。目がかゆいのだ。目がしょぼしょぼして頭がぼうっとするのは寝不足、春の陽気のせいだと思っていたが、もしかしたらこれらもみんな花粉のせいか――。